「神奈川県央地域若者サポートステーション」(以下県央サポステ、地域若者サポートステーションはサポステと略す)の取材記事、連載の後編です。前編の県央サポステの概要、面談内容に続き、後編ではカウンセリングやセミナーといった利用者へのサポート、そして就労先についてお伝えします。また「ひき☆スタ」利用者からいただいた質問についても、職員の方にお答えいただきました。

セミナーの種類、内容について

――セミナーにはどのようなものがありますか?

まず、利用する上でベースとなるのは、相談員とのカウンセリングです。そこで利用者の希望を伺ったり、こちらから提案したりします。そのうえで、利用者さんは、自由にセミナーを選ぶことができます。
セミナーには、コミュニケーション向上、ビジネスマナー、就職活動ノウハウ、パソコンスキル、それに自信回復や自己発見などさまざまなものがあり、グループで受けることになります。グループワークに参加しているのは同じように悩んで苦労している人たちなので、気楽な気持ちでセミナーを受けられるのではないかと思います。

――特に人気のあるセミナーはありますか?

パソコンの講座は人気がありますね。定員は15名なのですが、ほぼ満席になります。他にはセルフ・エスティーム(自己肯定感・自尊感情を引き出す)というグループワークも人気がありますね。参加者の中には、セルフ・エスティームを受けるのが7回目という方もいらっしゃいます。どのセミナーも何回受けても無料ですし、組み合わせも自由です。

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実際のセルフ・エスティームの様子


利用者の方にはひと通りのセミナーを受けることを勧めています。そうすることで人と話をしたり聞いたりする機会が増え、就職活動へのエネルギーが湧きあがるのではないかと思います。最初は不安かもしれませんが、理解してくれる人がいる場ですので、安心して参加できると思いますよ。

――パソコン講座をもとに資格を取得する方もいらっしゃいますか?

MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)など、パソコンに関する資格を目指す方もいます。我々はマイクロソフトの「若者UPプロジェクト」とパートナーシップを組んでいます。パソコン講座はマイクロソフトが提供してくれた機器と専用のテキストを使用し、講座を進めています。
パソコン講座の主な内容としては、初日はワード、2日目はエクセル、最後はパワーポイントでのプレゼンテーション、といったような3日間のカリキュラムになっています。

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ワードやエクセルなど、種類別のテキストが用意されている。


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テキストの内容


こちらの講座を受けてパソコンに興味を持った方の中には、職業訓練校のエンジニアコースに移るケースもあります。県央サポステではその後も継続支援ということでキャリア・カウンセリングを受けることもできます。神奈川県の職業訓練校は毎週水曜日が14時に終わりますので、その足で県央サポステに来ていただいて近況や不安について話していただくこともできます。 このように、就職ではなく、進学を決断される方もいます。いきなり就職やアルバイトをするよりも、職業訓練校や専門学校などに進む方がよい場合もあるかと思います。

また、ビジネスマナーの講座では、元キャビンアテンダントの方が講師を担当しています。まさにプロの方ですが、厳しく指導しているわけではありませんので安心してください。
チャームアップセミナーも、メイクアップアドバイザーの資格を持った元キャビンアテンダントの方が教えています。
男性の身だしなみに関するセミナーも開きたいと思っており、現在交渉中です。

――通常の講座とは別に、特別なワークショップはありますか?

税理士さんや社会保険労務士さんをお呼びし、お金と仕事、それに労働法規の基礎知識を学べる講座を月に1~2回行っています。また、声を出すことや体を動かすような講座もあります。この建物にはそうしたことをできるスペースがたくさんあるので、有効活用しています。

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県央サポステのある7階は市民交流プラザとなっており、多目的ルームが多数ある。


料理教室のセミナーもありますが、私たちは「キッチンコミュニケーション」と呼んでいます。グループで力を合わせて料理を作ることで達成感を得られますし、コミュニケーションを楽しくとることもできます。それがセミナーの目的でもあります。県央サポステの運営団体であるCLCAの小田原の畑で野菜を収穫し、料理で使うことも行っていますよ。

県央サポステから結びつく仕事とは?

村田さん
県央サポステの所長・村田さん


――県央サポステを通じ、実際に仕事に就いた方はどれくらいいらっしゃいますか?

2014年4月の開所以来、仕事に就いた方は2014年11月末までで60名となっています。また、登録者数は207名となっています。

――サポステを通じて就職したけれども、何らかの事情で辞めてしまい再びサポステを訪れている、という方はいらっしゃいますか?

いらっしゃいます。その場合は再度登録をしていただくことになりますが、登録の回数に制限はありません。仕事がなかなか続かず4、5回登録されている方も中にはいらっしゃいます。その場合は継続できない理由に焦点を当て、カウンセリングをしていきます。

――サポステに長い期間通い続けていても、なかなか就労に結びつかず不安を抱く方もいるかと思います。そうした方へのサポートはありますか?

厚生労働省の事業実施要綱があり、6ヶ月間での就労を目指すことになっています。6ヶ月間仕事に応募しているのに決まらないという方は、登録を延長することができます。
1対1の個別面談をベースにしていますので、就労先がなかなか決まらない状況となった場合、本人の焦りや不安について受け止めます。そして、次にどうしたらいいか、ということを一緒に考えていきます。そこで悩みが解消されたら、ハローワークに行ったり、求人情報をピックアップしたりと、先のステップへ進めるようになります。

――サポステとハローワークでは、どんな違いがありますか?

分かりやすくいうと、入り口がサポステで、出口の情報が集まっているのがハローワークといえますね。サポステは、動き出すためにエンジンを温めるところだとイメージしていただければいいでしょうか。私は、サポステとハローワークは両輪の関係だと思っています。

――こちらで就労に結びついた方は、どのような職種に就いていますか?

製造や物流が多いでしょうか。このあたりは地元の中小企業をはじめとして、北の方には工業団地があるので製造関係、東名高速道付近には厚木インターチェンジがあることから物流、駅前にはサービス業があります。小田急線は都内も通勤圏ですし、仕事を選ぶ際に不利になることはないと思います。厚木は産業地としての歴史が長いので、仕事の地盤がしっかりしていますね。
地元で仕事を見つけられるのは、大きな強みだと思います。働くことに対して自信をつけるためにも、よく知っている土地の方がいいですよね。地域の産業は若い働き手が足りなくて困っている側面もありますから、お互いのニーズが合致する部分も確実にあります。

――地元の企業で仕事体験をすることはできますか?

厚木市や海老名市で、老人ホームの仕事体験ができます。また、相模原市の児童養護施設で職員のサポートをすることも予定しています。また、伊勢原市に農園作業を通じて知的障害者を支援している団体があるのですが、こちらでも仕事体験をすることができます。福祉関係以外の業種についても仕事体験ができるよう、開拓をしています。

週に数回でも労働の現場に出ることは、ずっと家にいた方にとって大きな経験になっています。仕事体験は無給ですが、体験を通じて「お金が欲しくなりました」と話してくれた利用者の方もいました。この欲求が、求人情報を見るとか、アルバイトを探すとか、そういった次の一歩につながるのだと思います。体験先で認められて、正職員になった方もいらっしゃいます。

――県央のひきこもり支援を行っている団体と共同で行っていることはありますか?

いわゆる居場所のようなことを行っている団体さんは、少ないですね。県央地域はひきこもり支援を行っている団体さんが少ないという事情もありますが、そこにサポステができたということはプラスになるかなと思います。
例えば、規則正しい生活をするための自立支援する団体さんがあったら、そこで
支援を受け、「仕事を探してみたい」「仕事に就きたい」と思うようになった方をサポステに紹介してもらうことができますよね。県央は広く地域もさまざまですが、こうしたネットワークを構築していくことが大切だと思っています。

高橋さん
県央サポステ職員・高橋さん


――高橋さんは、県央サポステの前にはどんな仕事をされていましたか?

一番初めは、携帯電話の開発に携わるIT系の会社にいました。その後、営業を中心とした管理部門に移り、上司の提案で産業カウンセラーの資格を取りました。IT関連の仕事に就かれている方は、様々な事情から気持ちが滅入ってしまうケースがありますので、そのような時に他の社員へサポートができたらと思いました。
リーマン・ショックを期に退職し、ハローワークの就労相談員としてハローワーク厚木で1年ほど勤めました。その後、ハローワークを辞めてからは、民間企業に勤めましたが、マッチングがうまくいかず、離転職が続きました。
私自身も就職活動では苦しみましたし、ハローワークで様々なケースを見てきました。また、IT系の会社に在籍していた時には、採用の仕事も担当していたので採用面接に立ち会っていました。

――以前まで仕事をしていたけれど、何らかの理由で辞めてひきこもりになったというケースもありますね。

ひきこもりの方の中には自信が無く、自己否定感が強い方もいらっしゃいます。そのような方に対して、どのように一歩が踏み出せるのだろうか、ということを考えています。そのために、サポステでの活動を通じて少しでも、小さくても良いので成功体験を蓄積し、自己肯定感を高めてもらえればいいですね。
利用者の方にはひきこもり経験を持つ方も多数いますし、家庭環境や過去の経験から重いモノを背負っている方もたくさんいます。
先ほど、触れましたが、私自身、就職には苦労した経験もありますし、無業者だった時期もあります。反対に採用職に携わった経験やハローワークの相談員として就業した経験がありますので「ハローワークに行ったことがない、行くことに抵抗がある」という利用者の方がいましたら、私が同行し、一緒に訪問する事も可能です。そうやって少しでも安心できる環境をつくりたいですね。

ひきこもりの方へのサポート

――続いて、ひき☆スタを利用している方からの質問です。サポステを利用できるのは、若者だけなのでしょうか?障害や病気のある方も相談できるでしょうか?

年齢制限については厚生労働省によって決められていまして、15~39歳となっています。障害や病気については、仕事に就ける状況であれば利用できます。病気の方であれば、主治医の許可があれば大丈夫ですし、障害者の方であれば、障害者手帳を利用しての就職をサポートすることもできます。もちろん、障害者手帳を利用しない就職についても相談できますので、ご本人の意向に合わせて支援していくということになります。
相談していく中で「まだ仕事を探すのは難しいかもしれない」ということになれば、こちらから医療機関につなぐこともできます。障害者支援を行っている団体さんもあわせて利用することを提案する場合もあります。
サポステは、いわば就労に悩む若者の「総合窓口」のような機能を持っていると言えるでしょうか。

――「ひき☆スタ」ではひきこもりの高齢化をテーマにした投稿が多く、厚生労働省の定めている年齢層だけではカバーしきれていない面もあるのではないかと思います。もし、40歳以上の方から電話があった場合は、どのように対応をされていますか?

国の委託事業のルールで、ご利用いただくのは難しいという対応になってしまいます。このようなお問い合わせには、いつも大変申し訳なく思っています。

(※編集部より 40歳以上の方々にご利用いただける県の就業支援施設として「シニア・ジョブスタイル・かながわ」(横浜市西区)があります。月に1回、横須賀・厚木・平塚・小田原の会場で、地域出張総合相談も開催しています。(要予約)
詳しくは県のサイトをご覧ください。
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f70015/

――サポステを利用してみたいけれども、電話をかけるのが難しくちゅうちょしてしまう、という当事者の方もいらっしゃるかと思います。

今日は不在ですが、優しい女性スタッフがお電話を受けています(笑)見学も自由ですので、まずは見にいらっしゃるだけでも大丈夫ですよ。

――とても清潔感があって、入りやすい雰囲気がありますよね。

7階フロアーの奥にあって、あまり人目につかないことも幸いしているかもしれません。

奥にある
人目につかない通路を右に曲がった先に、県央サポステがある。


当事者の方の中には図書館に通っている方もいますので、県央サポステのチラシは、市役所や図書館に置かせていただいています。また、パソコン講座を実施する際には市の広報に載せていただくこともあります。ホームページに講座のスケジュールを掲載しておりますので、ぜひ覗いてみてください。

【編集部より】
私たちが取材している間も、訪問者が絶えなかった県央サポステ。資料を見せていただくと、開所から8ヶ月にして登録者数は207名、進路決定者数は60名と、どちらも年間目標値を達成したとのことです。ひきこもりの方に配慮したカウンセリングにより、当事者の目標達成に至るプロセスをしっかり支えていると感じました。
県央サポステへのアクセスや利用方法、そして最新のセミナースケジュールについては、以下の公式サイトをご参照ください!

県央サポステ公式サイト

【取材リポート】県央サポステで訊いてみた。【前編】

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