7月8日に開催される、ひき☆スタ コラボイベント「布団の中のアーティストVOL.7 〜ひき大将 湘南で演ってみた〜」に先立ち、「布団の中のアーティスト」の哲生さんにインタビューを敢行!ひきこもり自助グループ「step」で世話人をされている近藤健さんと対談しました。「布団の中のアーティスト」をはじめたきっかけ、音楽談義、即興のひきこもり川柳など、1時間に渡って盛り上がりました!

右手: 「布団の中のアーティスト」哲生さん 左手:ひきこもり自助グループ「step」世話人の近藤さん

右手: 「布団の中のアーティスト」哲生さん
左手:ひきこもり自助グループ「step」世話人の近藤さん



「布団の中のアーティスト」をはじめるきっかけ

近藤:「布団の中のアーティスト」を始める前、哲生さんは路上ライブをしてるころから「惨敗王」を名乗っていたの?

哲生:はい。「元ひきこもりの惨敗王です!」という感じで、歌ったりチラシを配ったりしていました。
路上ライブをしていたときに、「NPO法人 湘南市民メディアネットワーク」の増田さんに声をかけられまして。そのときはひきこもりの支援活動があることを知らなかったから、怪しい勧誘なのかなと思っていたんですけど(笑) それがきっかけで、当事者や経験者の人たちと会うようになり、音楽でひきこもりのイベントをできたらいいなという思いが徐々に芽生えました。

近藤:「惨敗王」として外で歌ってやるぞ、と思ったきっかけは?

哲生:「惨敗」って言葉は俺そのものだな、と思って。昔はリア充に憧れてカッコつけて歌ってたんですけど結局なれなくて。自分の弱いところを歌い出してから、今もそれを貫いています。

近藤:路上ライブはいつからやってたの?

哲生:25歳くらいから歌いだして、26~27歳で路上ライブをはじめました。

近藤:いまは何歳なの?

哲生:18歳です(笑) 近藤さんは?

近藤:15年くらい18歳をやってます(笑)

ひきこもりと音楽体験

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――布団の中でひきこもっていたときの、音楽の思い出ってありますか?

哲生:そのころは「X(エックス)ジャパン」のファンでしたね。バンドのギタリストのhideが亡くなったときにXジャパンの存在を知ったんですけど、男なのか女なのかわからないような格好がすごい好きで。
ぼくは元々野球をやっていたんですが、父親は「男は男らしく」「男は台所に立つな」っていう感じだったし、野球をやるなら坊主じゃなきゃだめだ、っていう感じでした。それが、野球をやめた途端にそういう決めつけが一気にムカついて。それでロックミュージシャンの女っぽい格好に興味が出たのかなと思います。
Xジャパンの「The Last Song」という曲の歌詞が好きで、独り夜の空を見つめてる、解ったはずの答えをどうしてまだ問いかけてるという内容でした。当時、学校に行かずに週一でアルバイトをしていたんですけど、仕事が全然覚えられなかったんですよ。こんなことでこの先生きていけるのかな、って思いながら聴いてました。

あと「叫ぶ詩人の会」というバンドのドリアン助川が、当時「正義のラジオ!ジャンベルジャン!」っていう相談番組に出演していて、よく聞いてました。リスナーからの相談が「リストカットしてます」とか「万引きしちゃいました。すみません」みたいな重い内容で、それにドリアン助川が答えるんです。その番組によって人間のダークゾーンみたいものを布団の中で知って「これは今まで野球ばかりやっていたときの明るい世界とは違う!」って思って。
そんな叫ぶ詩人の会に「抱きしめたい」っていう曲があって、それが、こびりついた便所のうんこを毎朝掃除している駅員を抱きしめたい、という内容なんですね。それが辛くて、最後まで聞けなかったんですよ。ひきこもっているときといったら、そのイメージが強いですね。

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近藤:ぼくは奥田民生のファンです。彼の「29」というアルバムの冒頭が「674」、「むなしい」と読む曲なんですね。それがそのまんまニートの歌で。枕はヨダレまみれだけど背広はとてもきれいっていう内容なんですよ。ひきこもる前の中学生くらいからずっと聞いていましたね。

「布団の中のアーティスト」の活動について

――「布団の中のアーティスト」にはどんな人が参加してるんですか?

哲生:パフォーマンスのほかに、絵の展示や歌う人、詩を送ってもらってぼくが歌うというものなどがあります。パフォーマンスをする人は元ひきこもりが多くて、作品を送ってくれる人は現当事者が多いですね。
ステージに上がってなにかやることで、一つ大きな壁を越えて自信を得るきっかけになるかなと思います。

――参加者からの反応はどういったものがありますか?

哲生:絵は描けるけど展示したことがないという人は「きっかけをくれた」と喜んでくれました。
発表することで「君の作品っていいね」「こうしたらいいんじゃない?」というリアクションをもらえることが大事だと思っていて。Twitterとかで気持ちを吐露するのも大事だけど、そこを誰かが拾って感想を話し合えるのがいいなと。

近藤:ぼくが「絵を描きたいな」とふと思ったとしても、描かないわけですよ。腰が重くて(笑) そのモチベーションを上げるためのものに、悔しいんだけど締め切りがあるんですよ。締め切りっていっても、イヤイヤ作っているわけじゃないから、それがモチベーションになりますよね。だから、こういう自発的に参加できる場って、すごく良い役割がありますよ。

哲生:絵とかを展示してくれる人って、描きたい気持ちはすごくあるんだけど、完成に持っていくのに気力を上げなきゃいけないんです。でも、完成させたらとても嬉しそうにしています。
詩も、完成してないのはいっぱいあるという人がいますけど、未完成の短い文だっていいですよね。

近藤:川柳だったらその点、思い立ったときにできるのでいいですよね。

お二人に「ひきこもり川柳」を詠んでいただきました

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近藤:……ということで、一句作ってみました。

鳴かぬけど
悪さもしない
ひきこもり

ひきこもりって白い目でみられがちだけど、だからといっておてんとうさまに悪いことしてるわけじゃないし……そんな思いをこめてみました。

――哲生さんは「ひき☆スタ」のひきこもり川柳に「若者よ 俺のようには なるなよな」という作品を投稿してくださいました。これにはどういう意味がこめられているんですか?

哲生:自分のことを「ひきこもりからうまく立ち直った人」と言われることがあるんですが、自分は決して「立ち直った」わけではありません。ウツっぽくなることもあります。だから、自分みたいな人間をお手本にしないでほしいなと思っています。
ひきこもりから「立ち直る」ためには、誰もお手本にはならないと思うし、それに他人を信じすぎではいけないような気もします。他人に対して「完全に信頼するか、少しでも落ち度があったら嫌うか」みたいにはっきり白黒つけてしまうと、自分が息苦しくなりますから。

――最後に、7月8日開催のイベントについて一言お願いします。

イベントはあくまで娯楽として、笑いが絶えないようにしたいと思います!

【編集部より】
当日は特設ページで募集中の「ひきこもり川柳」の品評会も行います!作品解説者として、ひきこもり名人の勝山実さんが参加予定です。こちらもふるってご投稿ください!

【哲生 プロフィール】
引きこもりの惨敗王、哲生。
湘南を中心にライブ活動をしています。
引きこもりフィーリング溢れる楽曲が多いです。
現在はライブ活動と並行して、ヒキコモリストや生き辛さを抱えた人達のためのイベント、“布団の中のアーティスト”を運営しています。
テーマは「表現行為で心の風通しを良くしよう!」です。

【リンク】

「ひき☆スタ」コラボイベント 布団の中のアーティストVOL.7 ~ひき大将 湘南で演ってみた~ 詳細情報

ひきこもり川柳特設ページ

「布団の中のアーティスト」ブログ

ひきこもり自助グループ「step」サイト

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