今年7月8日に開催したコラボイベント「布団の中のアーティストVOL.7 〜ひき大将 湘南で演ってみた〜」。それに先立ち「布団の中のアーティスト」哲生さんのインタビュー記事を掲載しましたが、今回はそのときのインタビューでのこぼれ話を編集。番外編としてお送りします!
ひきこもりはボクサーがダウンしたときに似ている
――近藤さんのひきこもり歴はどれくらいなんですか?
近藤:大学卒業してから、進路のプランを立てずに卒業したので、22歳……18歳の4年目から(笑)。6年くらいですかね。
stepという自助グループの世話人をやっているんですけど、28歳のときに初めてstepに参加しまして、当時最年少でした。でも、不登校の人に比べたら、ゆっくり入った感じかなあ。
哲生:(stepの中では)「遅咲き」というより、「早咲き」なんですね。ひきこもっているときは辛くなかったですか?
近藤:Everyday Sundayでいたときは楽だったんだけど、「それじゃいけないらしいぞ」と世間が言っているらしいことに気付いて、そのときに辛くなりましたね。娯楽を楽しんでいてもダメなのかな、消費活動しちゃダメなのかな、って思ったり。
哲生:すごい素直なんですね。そのあとに家庭教師の仕事を始めたんですか?
近藤:家庭教師っていっても、明日をも知れぬ身分なんだけど、「キチッとした仕事をやっていかないとね」って思うと何もできなくなるから、それも置いておいて家庭教師をやっています。
哲生:自分は小学校から中学校まで家庭教師についてもらっていたんですけど、ちょっと成績が落ちると「お前将来やばいぞ」と言われて。そこから「俺やべえかも?」って思い始めました。順調な進路に進まないとやばい、と焦った思い出がありますね。家庭教師が来るのが週1回なのに苦痛で。
近藤:教え子を見ていると、SNSがある時代とない時代で全然違うなと思うね。
哲生:自分はひきこもりではなくて不登校だと思っていたので、ひきこもり仲間がまったくいないし、もちろん情報もなくて。気力がマジでなかったですね。「息をするのもやだなあ」って。
近藤:「これまずいぞ」と思いながら生活するって、息も絶え絶えになりますよね。
「まずいぞ」と思いながら布団にへばりつくのって、ボクサーがダウンしたときに似ているのかな。あのときボクサーは気持ちいいらしいんですよね。そりゃ起きるのは大変だなあって。
ボクシング的にはまずいなーと思ってるんだけど、起きたら試合再開するんだと思ったら起きたくない。惨めでもいいからリタイアみたいな(笑)
他人からしたら、「寝てるときから起きただけじゃん」と思われるかもしれないけど、結構キツイんですよね。
ひきこもっていてもスポーツが好き?
哲生:勝ち負けや競争の世界がいやになってひきこもってる人もいるじゃないですか。そういうひきこもっている人の存在を知ってから、競争社会がすべてじゃないなと思ってます。
でも、「惨敗か勝利か」の二択しかないスポーツの残酷さは好きですね。打たれてうなだれている人を見るのもかわいそうだけど、それが感動につながったり。
近藤:特に団体競技なんてのは、チームでやると、影響を及ぼすから申し訳ないなと思うんですよね。やり始めてみると、全体の中で一生懸命やることに呑まれるんですよ。「俺そこまで乗り気じゃないのに」って。運動は嫌いじゃないんだけど、ほどほどがいいですね。疲れてる感を演技しちうゃんですけど、そこに自分の邪悪さがあるかなと。
昔から行儀はいいけどやる気がないタイプでした。バスケット部だったんですけど、「勝ちたいだろう!」とか、「負けて悔しくないのか!」というふうに顧問の先生が言っていると、「でも勝つんだったらがんばって練習するより自分より弱いチーム探すほうがよくない?」って思っちゃって。
哲生:俺が部活やってるころに近藤さんに会っていたら、気が合わなかったかもしれないですね。「なにだらけてんだよ!」って思ってましたよ(笑) それで燃え尽きちゃったんですけどね。当時は、部活に打ち込むことがすべてだと思ってました。
【哲生 プロフィール】
引きこもりの惨敗王、哲生。
湘南を中心にライブ活動をしています。
引きこもりフィーリング溢れる楽曲が多いです。
現在はライブ活動と並行して、ヒキコモリストや生き辛さを抱えた人達のためのイベント、“布団の中のアーティスト”を運営しています。
テーマは「表現行為で心の風通しを良くしよう!」です。
「布団の中のアーティスト」公式ブログ
http://blog.livedoor.jp/futon0405/
【リンク】
近藤さんによる「不登校・ひきこもり情報誌『今日も私は生きてます。』創刊号」書評
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