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<会場の様子>


2013年11月17日、湘南台文化センター市民シアターでトークセッション「ひきこもりの新しい生き方(出会い)講座」が行われました。

ひきこもり当事者や、当事者の子を持つ親など参加者は50名近く、会場は満員状態。イベントの内容は、ゲストの講演と、未来志向の対話を繰り広げる「フューチャーセッション」の体験です。

今回は、熱気のこもったセッションの様子、さらに主催者や参加者の方々に伺ったお話などをお伝えします。

■「フューチャーセッション」とは何か

「フューチャーセッション」とは、立場や専門性の異なる人たちが集まり、ひとつのテーマについて対話を重ねる場。基本的なルールとして、参加者は協調的な姿勢で話し合いに臨み、相手の発言を否定せずポジティブな提案を積み重ねます。そうすることで、新たな関係性や新たなアイデアを創造していくというもの。普通の会議とは違ったこの取り組みは、一般の企業でも行うところが出てきています。

■「ひきこもり2.0」という考え方

「フューチャーセッション」を始める前に、ひきこもり当事者の新しい生き方、働き方を模索する一般社団法人「COYOTE(コヨーテ)」代表理事・川初真吾さんが基調講演を行いました。川初さんは、「ひきこもり当事者をパートナーとして一緒に何かを立ちあげられれば」という思いからコヨーテを発足。ひきこもりの未来を肯定的に考えていく「ひきこもり2.0」を提唱しています。

<一般社団法人COYOTE(コヨーテ)・川初真吾さん>


「ひきこもり2.0」とは、ひきこもり当事者の持つ価値を肯定的に評価し、新たな社会とのつながり方や共生の道を見出す考え方です。「2.0」という表現は、もともとITの世界で「大幅なバージョンアップ」といった動向を指して使われ始めた用語で、バージョンアップ前の状態を「1.0」と称して対比させることもあります。この用語を「ひきこもりと親のあり方」に応用し、従来のそれを「ひきこもり1.0」として整理した上でバージョンアップしていく、そうした理念が「ひきこもり2.0」という名前にこめられています。

その一環として「IORI」という場で定期的に行っているのが「フューチャーセッション」。「当事者や親だけでなく、いろいろな立場の人を巻き込んだ対話が大きな化学反応を起こす」と、セッションの意義を話しました。

川初さんは「ひきこもり2.0」のコンセプトを通じて、「肯定しあえる世の中になればいい、と思っています。ひきこもりという切り口からそこへ少しでも近づけたい。それはとりもなおさず僕自身も肯定されたい、と思っているからです。いろいろな人の中にいても、否定されたり緊張を強いられたりしないよう、どんな人でもほっこり生きられたら」と考えているそうです。

■いざ「フューチャーセッション」開始!

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<フューチャーセッションの説明>


基調公演が終わり、いよいよ「フューチャーセッション」がスタート。テーブルは5つに分かれ、それぞれ異なるテーマを設定。「在宅生活2.0」「家族のかたち2.0」「居場所2.0」「働き方2.0」「自立2.0」、さらに、疲れた方や他のテーマで話したい方のために「ノンテーマ2.0」のテーブルも置かれました。テーブル間の移動は自由。目安として25分ごとに移動を促す合図が2度あり、計75分のセッションとなります。

参加者が多かったこともあり、1周目は各テーブルとも自己紹介が中心。しかし、2周目に入ると参加者も緊張が解けてきたのか、対話が活発になりました。世代や立場の異なる参加者たちが、発言者の言葉にうなずきながら耳を傾けると、次の発言者は自身の体験を踏まえながら話すなど、多様な対話のかたちが見えてきました。

「居場所2.0」では、参加者から「バーチャルだけでなく、実際に人とコミュニケーションをとってほしい」とリアルでの居場所の在り方を求める声が上がると、テーブルのホストは「ネット上でのコミュニケーションでも、自分が居場所と思えればよいという意見もあるかもしれません」などと、あらゆる可能性を見出すことを参加者に促していました。

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<各テーマのホストの方々>


それぞれのテーブルで対話が熱を帯びる中、あっという間に75分間が終了。「自立2.0」のホストを担当した勝山実さんは「積極的に意見が出て楽しかった」と感想を述べました。

参加者からは、「テーマが分かれていて、具体的な話ができた。未来を考えていくということは、私たち当事者の親としてはなかなか難しいものがある。私たちが死んだ後のこととか、少しでもヒントをもらえたら。親の会での話とは、また違った情報をもらえた」(当事者の親)、「『就労』や『居場所』など様々な側面から、自分がどのような立ち位置にいるかを確認したいと思い参加した。『フューチャーセッション』に参加して、実際に行われている就労支援と、当事者が求めているものがかみ合っていないという気がした。当事者の親の方からも同様の意見が出ていた」(当事者)、といった声が聞かれました。

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<フューチャーセッションで出た様々な考え>


今回の特別共催「湘南ユースファクトリー(以下SYF)」は、2013年6月9日に設立し、現在NPO法人格取得申請準備中(2013年12月25日現在)の団体。

SYFの代表理事で「相談機関ヒューマン・スタジオ」(藤沢市)の丸山さんは、「ほぼ満席になったのはうれしかったですね。今回は親御さんの参加者が多く、フューチャーセッションは初体験の方が多かったようです。親御さんにとっては意見を話せる場ということだったかもしれません。いわゆる一般のフューチャーセッションと違って、SYFのメンバーが中心となってテーブルを担当し、そのメンバーにあったそれぞれのテーマを設定するなど工夫をしましたが、なにぶん初めての取り組みということで、期待していたほど『未来志向』な話はできなかったかもしれません。今後のSYFの活動につなげていけたらと思います」、ということでした。

フューチャーセッションは、肯定的な意見を積み重ねて、新たな価値を創造することを目的としています。「相手の意見を否定しない」という行動は、簡単そうで意外に難しいこと。この姿勢は、普段生活していく上でも意識的に取り入れると、コミュニケーションを円滑にし、関係をポジティブに進めることができ、考え方にも良い変化を生むのではないかと感じました。
そんなフューチャーセッションに興味がある、または体験したいという方は、川初真吾さんが運営されている「IORI」で定期的に行われているので、足を運んでみてはいかがでしょうか。

※「IORI」について
2ヶ月に1回、偶数月の第一日曜日に主に都内で開催。運営スタッフ等はいるが、ほぼ全員ボランティアで関わる。最近は5、60人くらいの規模で開催しており、回数を重ねるごとに申し込みは増加。当事者以外の方からも関心が高まっている。

※湘南ユースファクトリー
不登校、ひきこもりの最中から将来まで、各段階にわたり生きることが楽になり動きやすくなるための支援システムの構築を目指す。社会や学校に復帰させるための支援ではなく、共生するための方法を模索し、創造することを事業理念としている。2013年6月9日に設立し、現在NPO法人格取得申請準備中(2013年12月25日現在)。

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