10月1日(土)、座間市にある「座間市サニープレイス座間」にて、堀内祐子先生による講演会「幾つになっても子どもの自立」―ヒントのひとつとして―(さんまの会、神奈川県立青少年センター共催)が開催されました。

ひきスタ・親スタでの取材恒例となった、駅から会場への景色です。

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座間駅前からスタート!


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自然豊かな座間谷戸山公園!この中を通って行こうとしたら迷子になりました……。

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ちょっと遠回りして到着。講演会の会場となった「座間市サニープレイス座間」です。

堀内先生は、発達障がい(自閉症スペクトラム症、ADHD、LD)の4人の子どもを持つ母親。子どもたちとの実体験をもとにした講演活動、本の執筆、さらには「親」と「支援者」という2つの視点に立ち支援活動を行う「ハッピーサポート」代表と、様々な支援活動を行っています。
また、自閉症スペクトラム支援士(日本自閉症スペクトラム学会認定)、特別支援士、傾聴心理士といった専門家としての一面も持っています。

堀内先生の講演には、レジュメもなければ、手元に台本もありません。「講演といっても、家族と普段しているように話している」という堀内先生は、話していくうちに思い出したことを次々と紹介していきます。

「イチゴドーナツとマフィン、どっちを選ぶ?」

この日の講演会には23名が参加

この日の講演会には23名が参加


堀内先生が「イチゴドーナツ事件」と名付けた、家庭での出来事を紹介します。
家族の中で、じゃんけんで勝った人から好きな食べ物などを選ぶ「じゃんけんルール」があり、ある日ドーナツを巡って家族でじゃんけんをした。すると、最後まで負けたケントくん(長男)の手元には、自分の嫌いなバナナが入ったマフィンしか残っていない。末っ子が選んだイチゴドーナツをどうしても食べたいと言って聞かず、みんなが食べ終わって夜中になっても「イチゴドーナツ」が食べたいと3時間半も言い続けていた。もう夜の11時半になり、このまま寝ないで言い続けることは分かっている。ケントくんにはこだわりの強さがあり、一回言い出したことをなかなか撤回しないのだ。

ここで堀内先生は、出席者に対して「さあ、皆さんならケントくんになんて言いますか?」と質問をします。
「末っ子と話し合いをさせるのはどうでしょうか?」
「実は、末っ子もバナナが嫌いなんです(笑) でも、バナナが嫌いでなければいい方法ですね」

ここで、実際にどう話したかを明かします。
「そんなにイチゴドーナツを食べたいなら、買ってきてあげる。でも、それって不公平になるよね。イチゴドーナツを買ってきてあげたら、一週間おやつを抜きにする。それとも、マフィンを食べるなら、いつも通りおやつは食べられる。どっちを選ぶ?」
すると、ケントくんは「イチゴドーナツを買ってきて」と答えたそうです。
夜の0時近くに、ドーナツ屋さんで無事にイチゴドーナツをケント君に買ってあげることができました。そして約束どおり、おやつを一週間抜きに。けれども、ケントくんは一切文句を言いませんでした。

こうした事例を幾つか交え、堀内先生は、子どもたちが「自分で選択する」ことの大切さを訴えます。

この選択が、お母さんの都合に合わせるような誘導の選択ではいけないと話します。「こっちを選んでほしい」という意図がなく、本人にとって選択肢の両方がポジティブであればいい。だからこそ、気をつけて選択肢を与えてあげてほしいということです。

いつも履いてる靴が濡れてしまっているけれど、本人はそれしか履きたくない。そんな時、つい乾いている違う靴だけを用意して履かせようとしがちですが、玄関にいつもの靴と、乾いている別の靴の両方を用意する。最初は濡れているいつもの靴を履いて出たものの、家に戻って来ました。そのときに玄関には出ないようにします。なぜなら、不本意ながら靴を履き替えるので、その姿を親に見られるだけでパニックになります。本人のプライドを傷つけないようにそっとしておく。そういった配慮が必要ですと話します。

本人の意思を尊重し、選択肢を用意すること。この積み重ねによって、子どもが自分の頭で物事を考えるようになり、成長していきます。
「そんなワガママをずっと言い続けてどうなるの?と言われるけれども、それはワガママではないんです」と堀内先生。
ケントくんは、小学校5年生にして、自分の症状を「薬にコントロールされるなんてゴメンだ」と話したそうです。堀内先生は、本心では薬を飲んで落ち着いてくれたらという思いがその当時はありましたが、この時、ケントくんの選択を尊重しました。 「発達障がい」と言うけれど、子どもはちゃんと発達するということを信じることが、とても大事だと話しています。

「親は、子どもをいつでも応援し続ける存在」

堀内祐子先生

堀内祐子先生


講演は後半へ。前半に話した、子どもの意思を尊重することは基礎の基礎。ここから、子どもが働くことにまつわる体験談を話しました。

堀内先生の家庭では子どもたちは家の仕事(玄関そうじ、お風呂洗い……)をすることによって、「お給料」を渡していました。他の友だちは遊びに行く時に親からお金をもらうようですが、堀内先生の子どもたちは働かなければお金がもらえないので、草むしりをして、その報酬を持って遊びに行きます。

これが、働く大人になるヒントだと、堀内先生は話します。

堀内先生の子どもたちは、それぞれ全くタイプが異なる発達障がいを持っています。
長女は6年近い不登校を経験しましたが、アルバイト先では15歳ながら新規オープンのお店でマニュアルをつくるなど、能力を認められるようになりました。現在は海外で暮らしながら、在宅で仕事をしています。
一方、三男は、何度も何度も仕事を変える苦労人。それでも辞めた次の日には、新しい仕事に行っています。ADHDの衝動性ゆえの行動力です。もちろん苦手な部分はあるので、本人をカバーしてくれる人が必要。お互いが助け合うことで、社会が成り立つということを感じさせます。

ここで、息子がひきこもってしまったというお友達の話が始まりました。
美容師だった息子は、コミュニケーションに苦労し退社。その後、ひきこもり状態となってしまいます。そのとき堀内先生は、そのお母さんに「どういうことを言ったときに、彼が嫌な顔をするか、笑顔になるかよく観るように」と伝えました。お母さんは、息子さんへ働くことの話はしないようにし、それでも、さらっと仕事に関する情報提供をするよう努めました。

さらに、堀内先生のように「家の中でも働くこと」を実践。息子がジュースのお金をもらうのも申し訳なさそうにしていました。そこで、美容師だったので髪をカットしてもらい、それに対してお金を払うようにしました。そうすることで、家庭の中での後ろめたさが小さくなったといいます。

その後、引きこもっていた息子さんは、親が見つけて紹介した自動車関係の仕事に就き、寮に入って、家を出たということです。

親だけでなくて、近所の人、アルバイト先の人、そうした周りの人たちが見守って認めてあげる。そのことが子どもを育て、幸せな大人にしていく、と話します。

堀内先生は「親として一番大事なことは、子どもを愛すること。そうすることで子どもが人を愛せるようになる。その根本にあるのが、信頼です。『あなたのことはあきらめない』と、何があっても言い続けてきた」と話し、最後に次男のエピソードを披露して幕となりました。

家の近所で行われていた運動会での応援を聞いて、次男がこう言ったそうです。
「お父さんやお母さんは、子どもをいつでも応援し続ける存在なんです」
皆さんもあきらめないで、子どもたちを応援し続けてください。

後編では、堀内祐子先生へのインタビューを紹介します。

【堀内祐子氏プロフィール】
1956年生まれ。
発達障がい(自閉症スペクトラム症、ADHD、LD)をもつ4人の子どもの母親。
日本自閉症スペクトラム学会会員、自閉症スペクトラム支援士、特別支援士、傾聴心理士としても活躍中。
講演では、発達障がい、子育て、不登校、引きこもりなどについて、経験を元に話す。
また、個々の状況に応じた支援を行う「発達障がい 親支援ハッピーサポート」の代表としても活躍。
共著書に、「発達障害の子が働くおとなになるヒントー子ども時代・思春期・おとなへ」(共著:ぶどう社)
「発達障害の子とハッピーに暮らすヒント」(共著:ぶどう社)がある。

<堀内祐子先生のブログ「ぎふてっど」>
http://ameblo.jp/horihori-2015/

<堀内祐子先生が代表を務める「発達障がい 親支援ハッピーサポート」>
http://happysupport.jp/

<ホームページ「ぎふてっど.com」>
http://xn--x8jzbin1d.com/

<リンク>
【講演会】『よかれ』という親ごころ-泉谷閑示先生に訊いてみた。
http://hkst.gr.jp/oyasuta/12940/

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