※プライバシーに配慮し、家族構成などは事実と異なる設定とさせていただいております。

これまで幾つかの親御さん向けセミナーを取材してきましたが、参加者の多くは母親でした。
今回は、ひきこもりの子どもを持つ父親にお話を伺い、父親ならではの悩みを中心にお話しいただきました。

子どもがひきこもったきっかけ

私は62歳、子どもは長男、次男、三男がおり、32歳の三男がひきこもっています。大学卒業後に就職活動をせずそのままひきこもったので、ひきこもって10年くらいになります。

大学卒業後、なかなか就職活動をしないなと思っていましたが、そのときはすぐに始めなくても、来年からでいいと軽く考えて見守っていました。しかし、1年、2年と経っても動き出さないので、家族皆で本人と話をしようと数回試みましたが、肝心のテーマに移る雰囲気になるとその場から逃げてしまいました。それからは、家の中でも家族を避けることが顕著になった気がします。

ただ、ひきこもったきっかけが就職活動かというと、はっきりしません。大学のときにアルバイトをしていましたが、ひきこもったあとも単発のアルバイトを何度かしていました。ひきこもるより前から何かを思い悩むようなことがあり、就職活動の時期になって我慢が限界に達したのかもしれません。

子どもの生活

自分の部屋から一切出ない、というようなタイプではありません。私が職場に行っている間、家の中で自由に動いているようです。それに、外に出られないわけではなく、近所のお店には足を運んでいます。

昔は家族全員で食事をしていましたが、あるときから三男が別室で食事を取るようになったのです。今も家族全員で食事を取りませんが、妻とは食べることもあります。
しかし、私と三男の仲が悪いわけではありません。三男からしたら、自分が一番触れられたくないテーマ(仕事、将来の生活のこと)を体現しているのがまさに父親である私なのですから、同じテーブルで目を合わせるのが辛いのかもしれないと考えています。

そうした状況なので、子どもとはほとんど会話がありません。これが長期化してしまうと、お互いの関係を変えることは難しいと感じています。

男親ならではの悩み

やはり、朝早くから夜遅くまで働く、ということになると、子どもがどういった状況にいるかわからなかったですね。子どもは昼夜逆転の生活をしていますから、朝は寝ていますし、夜遅く帰ると自分の部屋に逃げられてしまう。子どもに会うことができないので、妻を通してどんな状態か聞くことがほとんどです。

ほかの同じような悩みを抱えるお父さんに聞くと、やはりひきこもった男の子は父親と話したがらず、母親の方とは話すようです。
母親としても、子どもとコミュニケーションを取れない父親へ怒りの矛先が向いてしまう。そうすると、本来対等な関係であるべき3者のバランスが崩れて、お父さんが孤立してしまいがちです。子どもだけでなく、お父さんもひきこもるという話も聞いています。これはなにも父親に限らず、女の子がひきこもった場合、母親にもありうることではないでしょうか。

親御さんが集まるセミナーや家族会も、会社勤めをしていると、平日開催に参加しにくいのが実情です。休暇を取ろうにも、会社に理由を話すことがとても難しい。働いている若い父親にとっても参加しやすい環境が整うといいですね。

子どもへの思い

私だけでなく妻もですが、子どもには自分の好きなように生きてほしいと思っています。「会社に行け」とか、「働いてほしい」とか、そんなことはまったく考えていません。主夫になったっていいし、人がいない自然の中で自給自足の生活をしたっていいです。
しかし、そうした少しでも将来に関わることを話してしまうと、子どもが心の病にかかるのではないかと心配になり、話せません。自分のことを10年近くも責め続けている本人に話すのは、本当に危ないことだと思っています。

同じような悩みを抱えるお父さんへ

ひきこもりのことを勉強することが大事だと思います。
私も初めはひきこもりというものを知りませんでした。ひきこもりということを知り、外部のサポートがあるということを認識したのは退職する少し前でした。
困惑する状態が続くのは仕方がないことだと思います。しかし、ただ手をこまねいていては、自分の命をかけてしまうことになるかもしれません。そうなる前に、ひきこもりのことを知ってほしいと思います。
自分の子どもの心情を思いやり、そして自分のこともかえりみて、ひきこもりのことを知る努力をしてほしい。そうしたからといってすぐにいい結果は出ないかもしれませんが、知らないで対応していることが一番危ないと思います。

同じ悩みを持つ仲間を見つけ、自分の気持ちを吐露することも大切です。その上で常に勉強する気持ちを持ち、セミナーや家族会で学んだことを生かしてほしいですね。そのことが、子どもを導く糸口になるかもしれませんから。

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