子育てが終わらない 「30歳成人」時代の家族論
子育てが終わらない 「30歳成人」時代の家族論

小島貴子、斎藤環
2012年
青土社
188ページ

ひき☆スタでは長い歴史を誇る「読んでみた。」(書評)、今回は親☆スタに出張して星こゆるぎがお送りいたします!

さまざまな角度から語られる「家族論」

今回取り上げるのは、キャリアカウンセラーとしてひきこもり支援などを行っている小島貴子さんと、ひきこもり研究の第一人者として知られる斎藤環さんによる共著「子育てが終わらない 『30歳成人』時代の家族論」です。
本書は2人による子育てに関する対談をまとめたもので、そのためかやや散漫な印象を受けます。しかし、2人の主張はそれぞれ一貫し、かつ多くの場面で近い考え方を示しているので、本書で描かれる「家族論」にはブレがありません。「子どもの成熟」「夫婦関係」「親子それぞれが抱く欲望」「子どもの自立」「子どもへの役割意識」といったテーマ別に話しながらも、それぞれがおぼろげにつながるような連鎖反応を起こしています。
一方で、「専門家というのは、たんにヒントを与えるという程度の存在でしかありません」と斎藤さんが話すように、本書はお子さんを持つ家族に対し、あらゆる方向性を示すにとどめています。それは、ひきこもった子どもに対するマイナスの認識を見直し、親子関係をいま一度メンテナンスするためには、じっくりと時間をかけて取り組まなければならないことの表れかもしれません。


こうしていろいろな語り口がある家族論ですが、その前提として、2人にはひきこもりに関する幾つかの共通認識があります。そのひとつに、現代の成熟した社会において「個人は未成熟化している」という認識があります。
先進国であるほど教育期間が延び、モラトリアムが延長することが、その根拠として挙げられています。その一方で、社会では成人年齢を引き下げる議論が盛んになっていますが、若者支援はどんどん対象年齢が延びており、社会側からの若者に対する認識は矛盾をはらんでいる、と指摘しています。
この前提に立つことで、本書における「子育て」のフレームが明確に、そして柔軟性を持ってきます。
子育てにおいて重視される「親子間のコミュニケーション」ですが、小島さんは、最も述べておきたいこととして、家族間で問題解決におけるコミュニケーションがうまくいっていない場合、そこには「決めつけ」「逃げ」「分担」「威圧」「提案」という5つのパターンがあると話しています。このことは本書の大きなテーマの一つとなっており、2人による家族間コミュニケーションの実体験も多く語られています。
その中でも斎藤さんによる規格外な発想として、「子ども(親)の交換」を挙げたいと思います。


同世代でひきこもりのお子さんを抱えている親御さん同士が、一度子どもを交換してみるとよいと私は本気で思っています。これは親御さんに、お子さんとの適正な距離感を学んでもらうよい機会になるだろうと思います。よその子どもには言ってはいけないと思うようなことは、自分の子どもにも言ってはいけないんですよ。

有名なマンガ「ドラえもん」にも似たような話がありました。
のび太、しずかちゃん、スネ夫はそれぞれ親を嫌いになる思春期に突入。ドラえもんの提案により、未来の道具でそれぞれの親をシャッフルして過ごすことに。そうすると、子どもたちは他人の親が思いのほか優しいことに気づきます。3人は再び集まり、事の次第を報告。親だって人間だし、まずいことを言ったなと思えば反省して優しくしてくれることもある。自分たちも言い過ぎた部分があったじゃないか、といって元の家族へと帰っていく、というストーリーです。

実際に「子ども(親)の交換」をすることは難しいかもしれませんが、この話をカウンセリングでも活用しているとのこと。もし、ご自身の子どもがほかの子どもになったと想定したら、普段投げかけている言葉について見直す、よいきっかけになるかもしれません。

また、本書でも少し述べられていた、斎藤さんが力を入れている、ひきこもりの子どもを持つ家族の「ライフプラン」は、ひき☆スタで以前まとめ記事として取り上げているので、こちらもぜひ参考にしてください。

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