不登校ひきこもり情報誌今日も私は生きてます表紙

今日も私は生きてます。 不登校ひきこもり情報誌「今日も私は生きてます。」編集部 2014年5月 84ページ

皆さん、どーも。こゆるぎです。ひき☆スタ開設以来、この「読んでみた。」コーナーを担当してきました。 紹介してきた本は実に○○冊!(是非数えてみて下さい^^) 今回からは新しい取り組みとして、自分以外の方にも執筆して頂くことになりました。トップバッターはこれまでも「まとめてみた。」などでご寄稿頂いたstepの近藤さんです。 紹介本に興味を持ったら、投稿フォームから皆さんのレビューも募集しているので、読んでみてどしどし感想送ってください。 それでは近藤さん、よろしくお願いします!

不登校ひきこもりの当事者・経験者によるひきこもり情報誌

長崎県の不登校ひきこもり当事者が集まり編集部を結成。当事者自身の手によるひきこもり情報誌です。その内容は自らのひきこもり経験を綴ったものから支援施設へのインタビュー、自作小説や読者投稿ページまで多岐にわたっています。(目次を文末で紹介させていただきます)

目玉企画は18ページを割り振っている「長崎県ひきこもり地域支援センター」へのインタビュー関連記事(目次項目4と5)と、22ページに及ぶ当事者へのインタビュー「プロフェッショナル-ひきこもりの流儀-」(目次項目8)でしょうか。 「支援施設へのインタビュー」では、当事者支援をどう行っていくか、スタッフも悩みつつ手探り感の残る現状や、利用者の安心感を重視しているという施設側のスタンスを聞き出しています。

続く「ぶっちゃけトーク」ではインタビューを元に、施設を用意してくれるのは嬉しいけれど、当事者が来るのを待つのではなく、当事者がいるところまで支援しに来てくれないと支援が受けられない当事者がいるのでは?等、当事者たちが物足りなさを感じた点を指摘しています。

「プロフェッショナル-ひきこもりの流儀-」は、現役?のひきこもり当事者への取材記事。今回は30代男性のイエッタさんが取材に答え、家族との関係から部屋での過ごし方まで自らのひきこもり経験を飄々と軽妙な口調で語っています。 「部屋にパワーを吸われちゃうよね」という発言や、「なんか、もうどうでもいいかなっていうのはあるわな」「生きることに対しての?」「うん」というやり取り等ドキっとさせられる部分が非常に多く、読んでいて引き込まれるものがありました。

当事者活動の意義

・気がついたら。毎週出かけてました(笑) ・絵をたくさん描けて幸せです。 ・部活みたいで楽しかった。部活したことないけど・・・。 ・お疲れさまでした。

これらは制作後の巻末コメントに載せられていた編集メンバーのコメントです。「気がついたら毎週出かけてました(笑)」等はひきこもり当事者ならではの感想だと思います。 制作代表の古豊さんはあとがきで「働きたくないわけではない。自分らしく働ける場が欲しい。僕はそう思います。だからこそ、もしこの情報誌制作が仕事になれば。自分らしく働ける場になれば。そううまくはいかないと思いますが、それでも目指しながら続けていこうと思っています」と、自分の気持ちを綴っています。裏を返せばこの情報誌制作が(発刊時点で)仕事にはなっていない、ということです。 しかし編集部による制作活動は絶えることなく続いており2014年12月に第2号発行、2015年9月に第3号が発行されました。仕事になっていない形でも、当事者による活動が持続されている事、この事に私はとても重要な意味を感じました。 外に出たがっているひきこもり当事者が、外出それ自体は抵抗感なく自由に出来るようになったとしても「では外出が困難でなくなれば、外に出掛けていくようになるのか?」というと、そうはならないのだと思います。(ならなくてもいいのだけれども)

「着替えて、靴を履いて、玄関のドアを開けて出かけていく」これが自然に行われるためには、何かの予定か散歩や買い物といった目的が必要です。それはひきこもり当事者に限った話ではありません。「特に意味のない外出」というものは、大多数の人があまり行わないでしょう。買い物のように一人でこなす予定を除くと、家の外の世界で継続して外に出る理由を与えてくれる場所・コミュニティの役割を果たすものは、学校か職場以外には殆どないのが今の社会の現状なのではないでしょうか。しかし、外出が困難ではなくなっても学校・職場というような場所への参加は多くの当事者にとって、やはり難しいのです。

職場への参加は、職員でいられるかそうでないか-言い換えれば、休まずに出勤し役割を果たせるか、そうでないか-といった具合に、どうしても1か0かになってしまいがちで0.3や0.5の参加のような緩い関わり方が出来ません。最近では好きな時に好きな時間だけ働けるタイプの仕事も増えていますが、そちらはどうしても職場が流動的になり自分の居場所として根を張るのは難しそうです。最近ひきこもり支援で流行している「居場所」もこうした問題に対する需要があるからこそ、生まれてきたのだと思います。

そういった社会の中で、この編集部は仕事ではないおかげである種の曖昧さを維持しながら、しかし役割を持って能動的に活動に参加する事の出来るコミュニティを形成出来ているのだなと、この情報誌を読んで感じました。それはある意味職場よりも貴重で、今の社会の中には充分に足りていないものだと感じられるのです。 このような活動の仕方が出来る場所・コミュニティが増えていくことは、現役世代のひきこもり当事者の世界だけでなく、定年を迎え職場という居場所を離れた多くの高齢者達の生活も豊かにしていくように思います。

・・・・・「今日も私は生きてます。」目次・・・・・ 1・ごあいさつ 4ページ 2・「今日も私は生きてます。」に寄せて 6ページ 3・当事者手記 8ページ 4・-支援団体に聞く-あなたはどのような支援をくれますか? ~長崎県ひきこもり地域支援センター編~ 12ページ 5・~長崎県ひきこもり地域支援センターへ取材に行って~ 編集部でのぶっちゃけトーク 24ページ 6・支援団体に聞く-あなたはどのような支援をくれますか? ~不登校・ひきこもり支援 もぐり編~ 30ページ 7・ひきこもり先紹介します 34ページ 8・プロフェッショナル-ひきこもりの流儀- 37ページ 9・家にひきこもっているんだが、最近歯が痛くなってきた件について 59ページ 10・投稿ページ 64ページ 11・連載小説コーナー 73ページ 12・掲載団体一覧・お知らせ 78ページ 13・巻末コメント・あとがき 82ページ

「今日も私は生きてます。」は↓の編集部ページからメールを送ることで購入できます。 https://www.facebook.com/kyoumowatashiha/timeline?ref=page_internal

<筆者プロフィール> DSC_0154 近藤 健(こんどう・けん)step世話人 家庭教師 2004年に学生生活を終えた後ぼんやりと、しかし平和に過ごしていたら7年が経過。2011年にハローワークの相談員に空白期間を叱責された事をキッカケに、自分を責めだし外出や日常生活を送る事が難しくなる。 その時、「ひきこもり」という単語を知りstepに参加。当時の世話人の後を継ぎ現世話人となる。 step参加と併行して、よこはま若者サポートステーションの利用を開始。 その他にも様々な場所に足を運び、若年から高齢までの多様なひきこもりや新卒既卒ニート、また普通に(?)働いている人々と語らいながら自分がどんな日々を送りたいかのイメージを持つようになった。 今も家庭教師をしつつ人々の姿から学ぶ日々を送っている。 step(ステップ)https://step-kanayoko.web.app/index.html メール stepkanayoko@yahoo.co.jp

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