希望のニート (新潮文庫)希望のニート表紙
二神能基
新潮文庫
236ページ
初版:2005年6月 東洋経済新報社
新潮文庫版:2009年4月

著者はNPOで活動

 著者はNPO法人「ニュースタート事務局」の代表をされている方で、毎年200組近くのひきこもりやニートの当事者、またはその親と面談をする機会があるそうです。そんな著者の多くの体験談とそこから考察したことについて、5章に渡って書いている本だよ。

若者が生きにくい現代の日本

 筆者は全体を通じて、ひきこもりやニートを単なる「労働意欲のない甘えた若者」と片づけることに異議を唱えている。それを基軸として、主にひきこもり・ニートを多数生んでいる状況について持論を展開しているよ。

 ひきこもり・ニートが「甘えた若者」と誤解を受ける背景について、親世代との思考の違いがあると、著者は考えている。以前の日本では生きるための楽しみといえば、テレビや車、それにマイホームを買うこと。そのためには懸命に働いて十分にお金を蓄え、家庭を持つ。これが旧来の日本の「幸せ像」。

ところが、そうした物欲的な物の考え方に疑問を呈し、やりがいのない仕事で我慢してまで働き、お金を稼ごうと思わない若者が増えている。ひきこもり・ニートになる若者は、そうした考えてを持っている傾向が強い、と筆者は考える。

そして日本社会全体で見ると、就職内定率が下がっており、人間の労働力をパーツとしか見ていないような風潮があり、大企業といわれる会社でも、不祥事が相次いでいる。こうした社会状況も、若者が社会に馴染めなくなっている傾向に拍車をかけていると論じているんだ。

以上のことをまとめて、著者は次のように書いています。

フリーターやニートの問題を、若年層の個人責任、あるいは家族の責任ととらえてきた日本こそが、特殊な国なのです。 明日に希望を見出せない、先進国の若者の普遍的な問題だと、まずは認識を改める必要があるのです。

 ひきこもり・ニートは日本の状況を鏡に映したような存在であり、彼らの存在が社会に問いかけている問題を見落としてはいけない、と強く語っているんだ。

 

人生を豊かにする世代間交流

 以上のことから、ひきこもり・ニートの若者にもっとも必要なのは、多世代交流の場だ、と論じている。著者が代表を務めるNPOでは、そんな交流の一環としてデイ・サービスを体験できるのだけど、そこでの老人の利用者との会話で、これまでの「頑張らなきゃいけない」という凝り固まった脅迫観念を捨て去ることができた若者もいるんだそう。

 こうした事例を踏まえ、著者は現代の核家族的な在り方ではなく、大家族的な生活を提案している。具体的には、とりあえず50%自立すればよい。他の50%は家族に頼ったっていい。まずは親子でパラサイトしあって、そこから多様なパラサイト・ネットワークを広げていければいい、ということ。ネガティブにとらえられがちな「パラサイト」という言葉が肯定されることで、不思議な安心感があるよね。

 色々な世代の人と話をすることで、自分だけでは気づかなかった助言をもらって視野が広がったり、人生に光明を見い出せたりするかもしれない。そうした交流がきっと人生を豊かにするはず、と筆者は主張している。ふーむ。

人生のレールはひとつじゃない

 現代の「勝ち組」「負け組」という単純な言葉で、いとも簡単に各個人の人生を分かち評価するような、無機的で閉塞した雰囲気を、みんなもどこか感じているんじゃないかな? 年収が低くても自分の時間を作れて、無理せず働きたい、という若者たちのための居場所がちゃんとあったらいいな、とこゆるぎは思っています。この本の著者が言うように、誰もがお金のために無理をして家庭をかえりみず働きたいわけじゃない。それでも、そうした人生を歩まなきゃならないような気がして、プレッシャーに押しつぶされちゃう。固定観念を捨てて、自分が気持ち良く生きるってことについて、肩の力を抜いて、想像してみるのもいいかもしれないね。

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