作者サリンジャーが、これを書いた後、ひきこもった。もう死んでしまっていて、結果論だけど、辞世の句にも思える。とりたてて、ストーリーはなくて、高校生のホールデン・コールフィールドが、高校退学が決まって、寮から家に帰る数日間を描いた作品。

コミカルな文章で、「うんざりしちゃう。」「めげちゃう。」「とりあえずへこむ。」「よれる」「落ち込む」等々の溜息が詰め込まれている。個人的には、日常生活の中での、言葉にならない微妙な気持ちを表すシーンがたくさん出てくる。誰かと会いたいし、話したい。とくに、自分と同じように世の中を思っている人とわかりあいたい。でも、誰かと会うんだけど結局、分かり合えない。そんな主人公のお話です。

下の言葉でなにか感じる所があったら読んでみてください。人生を生きるには、うまくたちまわるのか、善く生きるのか、私にはわかりません。ただ、昔にもわからなかった人がいるようだということを教えてくれた本です。(分かったところで、実行できませんが。)

「君はいつか男子校に行ってみるべきだよ。なにしろ、インチキ野郎の巣窟みたいなところでさ、そこでやってることと言えば、いつの日にかろくでもないキャデラックを買える切れ者になるべく、せっせと勉学に励むことだけ。そして、わが校がフットボールに負けたら、天下の一大事みたいに思いこまなくちゃならないわけだよ。あとは、女の子と酒とセックスの話、それだけ。それで、ちっぽけで陰湿な派閥みたいなのを作って、身内で固まりあっている。」

「あとに残された僕のスーツやら運動用具やらを一体どう処分すればいいものか、母が考えあぐねている姿が何度も目に浮かんだ。」

「人はいつだって見当違いのものに拍手するんだよ。そういう連中は、手あたり次第、誰だってだめにしちまう。」

「お金っていやだよね。どう転んでも結局気が重くなっちまうんだ。」

「僕のことを知っている人間なんて一人もいない場所に行って、そこで仕事を見つけるんだ。そして、耳が聞こえないふりをする。そうすれば、誰とも意味のない愚かしい会話をしなくて済む。一生誰ともしゃべらなくてもいいかもしれない。僕は、みんなの間抜けな車にガソリンを黙々といれつづける。そして、給料をため、森のすぐわきに小屋を建って、一生をおえるんだ。こういうことを考えているだけで楽しかった。」

神奈川県 待避壕から顔を出してみた人(投稿日:2016年4月16日)

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