「ひきこもり」がなおるとき (講談社プラスアルファ新書)
「ひきこもり」がなおるとき (講談社プラスアルファ新書)
磯部潮
講談社+α新書
2004年
203ページ

臨床心理から、ひきこもりの「なおしかた」を考える

医学博士、そして臨床心理士である著者が、自身の専門分野から「ひきこもりとはどういう状態か」を丁寧に説明しています。そして、臨床例をもとに「ひきこもり」となる社会的背景、当事者と家族はどういったアクションをするべきか、そして医療機関をどのように利用するべきか、分かりやすい構成の中で順を追うように持論を展開しているよ。

ひきこもりは疾患ではなく「状態」

冒頭の「はじめに」で、本書の狙いについて以下のように書いてあるね。

「ひきこもる意味」を考えていくことが、ひきこもりにとって最も重要なことに思えます[…]本書では、この「ひきこもる意味」を探っていきたいと考えています。

精神疾患と「ひきこもり」は混同されがち。例えば「社会不安障害」は、多くの「ひきこもり」に見られる過度の対人緊張、対人過敏があるとされるね。たしかに、この障害のためにひきこもるケースは非常に多い。しかし、「ひきこもり」自体は診断名ではなく「状態」をさす、と筆者が述べているように、本書では「心の病気によるひきこもり」とは違う「自らの意志によるひきこもり(狭義のひきこもり)」を設定しているみたい。

著者の考える「狭義のひきこもり」をまとめたものは、以下の通りだよ。

①ある程度の期間(おおむね六ヶ月以上)自宅にひきこもっているが、なにもしないわけではなく、自分にとって必要あるいは必要とおもわれることは最低限できること。
②ひきこもっていることに違和感を感じ、「ひきこもり」から抜けだしたいと思っているが、その方法はわからず、自分でもどうしていいかわからなくなっていること。
③「ひきこもり」そのものが、精神疾患に伴う一つの症状ではないこと。

となっているね。ふむふむー。

「うつ病」とは違う「ひきこもり」の葛藤

混同されがちな「ひきこもり」状態といくつかの精神疾患。現代的な病として注目されている「うつ病」もその一つで、「うつ病」によるひきこもりと「ひきこもり状態」との区別はつきづらい。でも、「ひきこもり」の症状は「うつ病とも似ているようで明らかに違う」と書いているね。

うつ病は「悲哀感、不安感、意欲低下などの抑うつ状態」が中心なのだけれども、ひきこもりの場合は、自身が社会参加できないことによる「絶望感や罪悪感」が募り、空虚な感覚に支配されているんだって。
うつ病と「ひきこもり」の大きな違いを端的に言うと、うつ病では負のエネルギーが「内側」へ向かうのに対し、「ひきこもり」では「社会参加をしたい」というエネルギーが「外側」へ向かっているものの、そうできない苦しみから結果的に「内側」へ返ってくる、ということになるみたい。なるほど。

ひきこもる社会的背景については、現代の若者の間にある希薄な人間関係について言及。対人緊張を持つ当事者には、まず「人慣れ」してもらうために、まずコーヒーショップに一人で入る。家族は、当事者を操作しようとしないこと……などなど、各章で述べられる「ひきこもり」のなおしかたは、たしかに精神疾患に対するものとは違って投薬がないし、カウンセリングだけでなくて家族や第三者も関わってくる。

「ひきこもり」を精神疾患ではなく「状態」としっかり認識することで、当事者自身や家族の対応や気持ちも変わるかもしれないね。

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