仮面ひきこもり あなたのまわりにもいる「第2のひきこもり」 (角川oneテーマ21)
仮面ひきこもり あなたのまわりにもいる「第2のひきこもり」 (角川oneテーマ21)
服部雄一
2014年
角川書店
194ページ

仮面ひきこもりは「潜在的ひきこもり」

これまで「言ってみた。」で取り上げてきた書評を見ると、ひきこもり状態となって外に出られない、社会参加が難しくなる、といった「社会的ひきこもり」を取り上げたものがほとんどだね。

一方、今回取り上げる本「仮面ひきこもり」は「社会的ひきこもり」とは違って「潜在的ひきこもり」状態であることを指しているんだ。著者は心理研究所の主宰でありセラピスト。自らカウンセリングをしてきた経験から、多数の症例を紹介して仮面ひきこもりの特徴、そして快復へ至る方向性を示しているようだよ。序章で書いてるように、本書の目的は「仮面ひきこもりの実態を明らかにし、治療が可能であることを示す」ことなんだ。まずは、本書における「仮面ひきこもり」とは何か?というところから見てみよう。

どんな人が「仮面ひきこもり」なのか?

「仮面ひきこもり」について、著者は以下のように書いているよ。

仮面ひきこもりは、社会参加をするひきこもりである。彼らは普通の社会生活をしており、部屋には閉じこもらない[…] 彼らの多くは、人間不信と対人恐怖を笑顔で隠して、相手に嫌われないように生活をしている。相手に合わせる苦しさと孤独感は彼らに共通する感情である。

表面では「いい人」を演じているけど、そのことが負担になったり、自分が孤独だと考えたり……「社会的ひきこもり」ではない人にも、そういう経験のある方がいるのではないかな?内側ではひきこもり状態になりつつあるのに、外面ではその素振りを全く見せない、まさに「仮面」を被っているということなんだね。

母との関係

こうした「仮面ひきこもり」となった人たちに多く共通することとして、著者は「母との関係」を強調している。

母子関係の問題が仮面ひきこもりの基本症状-人間不信、対人恐怖、感情マヒ、人格の乖離-を生み出している。

人に対して緊張する、思ったことを言えない、人に調子を合わせてしまう(共依存)、異性と親しくなれない、子どもを可愛がれない……。こうした様々な症状のある「仮面ひきこもり」が、なぜ母子関係から引き起こされると考えているのだろう?

著者は「母と絆をもてない子どもは人格が二つ形成される」と書いている。母に合わせる「表の自分」、母(他人)に見せない「本当の自分」がいるということなんだね。これは、多重人格を専門としている筆者らしい見解に見受けられる。子どもを愛せない母親に育てられることで、本当の自分が内側に閉じこもってしまう。すると、母親に「自分をよく見せよう」「何事もないようにやり過ごそう」としてきた経験が、成長後の社会生活でもそのまま引き継いでしまい、自分を苦しめる。以前書評で紹介した「毒になる親」ととても共通する考え方だなあ~。

快復への道のり

さて、こうした「仮面ひきこもり」に悩む人たちには、どのような快復の方法があるのだろうか?著者は自身が「ひきこもりセラピー」と呼ぶカウンセリングの方法を紹介しているよ。このカウンセリングの目的は、セラピストが「表」の人格と対話し、心の奥に隠れた本当の人格を見つけることにあるんだって。その具体的な方法の一例として、感情マヒを治す「沈黙セラピー」というやり方を紹介しているよ。

患者は自分の感情がよく分からない。しかも、カウンセリングで無理に話すことによって、さらに感情を抑圧する(彼らはカウンセリングで「話をする役割」を必死に果たそうとする)[…]しかし、この場合、カウンセラーが黙ると逆に感情を感じやすくなる。
[…]しばらくするとAQさんの顔から笑顔が消えた。そのまま沈黙を続けると「先生は私が手がかかる患者だと思っているんでしょ」とポツリと言う[…]さらに黙ると、「そうなら、そう言って頂戴」と怒鳴った。
私が初めて「いや、手のかかる患者とは思っていないよ。あなたが何を感じているか知りたかったんだよ」というと、彼女は泣き始めた。「あなたは無理して話すクセがあるからね」と言うと、黙ってうなずいた。

こうして、患者が沈黙に耐えられなくなり怒鳴ることで、自分のカラを破ることができるのだね。ふーむ!

日本人の二極化

著者は最後に、仮面ひきこもりが引き起こされる背景に「日本社会の恋愛事情」が深くかかわっていると推測している。先ほど仮面ひきこもりと母との関係について少し書いたけれども、その母自身も日本固有の家制度や世間体を大事にする結婚事情にとらわれた当事者。「愛情のない結婚」が負の連鎖を形作ると考えているんだね。その結果が現在の人口減少へつながるとも書いているよ。

今、日本人の二極化が静かに進んでいる。 二極化とは、日本人が「子孫を残すグループ」と「子孫を残さないグループ」にはっきり分かれることである。これは日本人の自然淘汰と言ってもいいだろう。この二極化が未婚者の増加、少子化、日本の人口減少という形で現れている。

潜在的なひきこもりの増加は、もはや個人の問題でもなく、社会的に大きな問題として扱うべきという主張なんだね。社会とひきこもりが密接に関係している、その一面を表しているように思えるよ。

本書全体についての感想だけど、ここまで書いてきたような内容が繰り返し何度も出てくる。そのため読んでいて構成が平坦な印象を持ってしまう。「仮面ひきこもり」という誰しもが抱えうる問題を解析し、症例も多く紹介されているので読者としてはとても共感しやすいのだけれど、それだけに問題の深層に切り込めていない点が惜しいと思ってしまう。しかし、ページ数が少なくすぐに完読できるので、自分の内側と向き合うとっかかりとしてはいいのかもしれないな~。

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