新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が5月に解除されたものの、人数が多いところへの移動や、大規模なイベントの自粛など、さまざまな形での活動自粛が続いています。
 こうした制限は、ひきこもり自助グループにも直撃。公共施設や居酒屋などで懇親を図っていた団体の中には、活動を休止したり、オンラインでの居場所に切り替えたりするところも出てきています。
 今回、3団体の代表者5名にオンラインでお集まりいただき、オンライン運営の良いところや悩むところについてとことん話していただきました!

座談会参加者の様子


参加団体の紹介

ひきこもり自助グループ step(横浜)近藤さんの名前のイメージ  石黒さんの名前のイメージ

2000年7月に設立。主に横浜市内で自助会を開き、ひきこもり当事者・経験者間で親睦を深めている。
年齢層:主に30~40代。10~20代や50代の方の参加も。


【コロナ以前の活動内容】
月に1~2回、神奈川県立青少年センターに10人くらい集まっておしゃべり。映画を見たり、少し遠くに出かけたりするイベントも開いていた。


【現在の活動は?】
感染症対策のため県立青少年センターが借りられなくなってしまった。様子を見ながら活動を再開したいと考えていたが、いつ落ち着くかわからない状況なのでオンラインをやってみたいと考えている。

※2020年9月1日から神奈川県立青少年センター青少年サポートプラザは利用再開しています。


いけふくろうの会(池袋)たくみさんの名前のイメージ  伊藤さんの名前のイメージ

たくみさんと伊藤さんで、「最初から二次会」をコンセプトにした定期的な飲み会を2009年2月に立ち上げ。不登校・ひきこもり当事者やその界隈の人達が集まる交流会を池袋で開催。最近は不登校やひきこもりでない人も参加し、フィールドが広がっている。
年齢層:主に30代~50代。50代以降の人も参加するなど、幅広い。


【コロナ以前の活動内容】
居酒屋に10~20名集まって自由におしゃべりする飲み会を開く。


【現在の活動は?】
居酒屋での活動が難しくなり、現在はZOOMを使いオンラインで「いけふくろうの会」を実施。
遠方に引っ越してしまった人たちとオンラインで再びつながるようになるなどメリットを感じる一方、実際に顔を合わせる飲み会との違いもあり、居心地をよくする方法を模索している。


ひきこもり女子会 ひきはち(八王子)石丸さんの名前のイメージ

2019年に6月にスタートしたひきこもり女子会。ほかの当事者会に参加したことがきっかけで地元にも当事者会を作りたいと考え、石丸さんを含む2名の女性で立ち上げた。
年齢層:主に20~40代。


【コロナ以前の活動内容】
公民館やカフェで月1回集まってお話していた。そのほか、季節に合わせたイベントを開催。


【現在の活動は?】
女性限定で月に1回、1~2時間ほどお話をするオンライン女子会を開催。以前は数名だけ参加していたのが、オンラインになってから遠方の参加者が増えて10名ほどに増加。全国の人たちと知り合えるなど、多くのメリットを感じている。



活動を制限されて困っていること オンラインの良いところ・悩むところ

近藤さんの名前のイメージ活動を制限されて困ったのは、いつも使っていた青少年センターが8月末まで閉館になったので、居場所を開けなくなったことです。
9月以降に利用できるようになるとしても、人数を制限するため申し込み制にするとか、万が一症状が出たときのために行動を追跡できるよう記録を取るとか、今までにない仕事が増えるかもしれません。
「step」は気楽に集まれるのが特徴なので、そういう労力を払いながら運営をしていくのは難しそうですね。

石黒さんの名前のイメージほかのスタッフが主催した「step」のオンラインに何度か参加しましたが、中国地方や北陸地方などの遠方からつながった方もいて。県外に住む方とお話できたのは良かったです。
今までの「step」は実名で参加する必要がありましたが、オンラインは匿名性が高いのが大きな特徴。そのおかげで参加しやすい人もいるんじゃないかと思います。

たくみさんの名前のイメージ引っ越してしまった仲間とオンラインの「いけふくろうの会」で再会できたのは、とても嬉しかったですね。
飲み会でおしゃべりする「いけふくろうの会」はお酒を飲めない方ももちろん参加されてるのですが、遠慮してしまう方もいます。そういう場合でも、オンラインならまわりを気にせず参加しやすいと思います。
居酒屋ではたくさん飲む人だと4,000円くらいかかることもありますが、オンラインなら安上がりです。

伊藤さんの名前のイメージほんとにたくさん飲む人もいるからね(笑)居酒屋で開催してるときは、あまり飲まない人なら2,000円くらいだけれど、それでもオンラインの方が安い。

たくみさんの名前のイメージデメリットは、複数人で同時に話しづらいところ。居酒屋なら大勢いても席を自由に移動できますが、オンラインは人数が多くなるほど話しづらいと感じます。

伊藤さんの名前のイメージ居酒屋での集まりなら、静かにしている人でもちょっとした会話ができるのですが、オンラインではみんなが順番に話すシンポジウムみたいになってしまうので、そういう細やかな交流ができないですね。
それと、オンラインでは人と目が合うことがないんですよね。これも実際に会うのとは違うなと感じます。以前からよく参加してくれてる人が「オンラインとオフラインは似て非なるもの」と話していました。大勢でいながら、同時にそれぞれの人たちがいろんな話題でおしゃべりできる楽しさがオンラインだとなくなってしまって、さびしいなあと思っています。

石丸さんの名前のイメージ「ひきはち」はまだ立ち上げて1年ほど。手探りでやっている中でオンラインに着手しなければならなかったので、初めは戸惑っていました。音声トラブルや操作方法の説明など、不慣れな作業が多くて大変に感じたことはあります。
一方で、「ひきはち」ではオンラインのメリットをたくさん実感しています。全国から同じ悩みを抱えている方が参加してくれることや、会場を借りるなどの必要な経費がかからないこと。それに、カメラをオフにして顔を出さないようにしたり、マイクを切って聞くだけの参加にしたり、参加者にとって選択肢が増えるのもいいなと思います。
また「ひきはちのオンライン女子会を参考にして、自分もオンライン家族会をやってみました」という参加者の方がいらっしゃって、とても嬉しかったですね!
これまでは参加人数が1、2人くらいだったのが、オンラインになってから10人くらいに増えて。多くの人が継続して参加してくれるので、とても楽しいですよ。

オンラインで居場所を開くことの良いところ・悩むところまとめ

良いところ悩むところ
・遠方に住む人が参加できる
・参加者が増えた
・匿名性が高いのでハードルが低い
・費用がほとんどかからない
・イベントの準備が楽になった
・主催したい人が気軽に居場所や家族会を開ける
・大勢の参加だと話しづらい
・細やかな交流ができない
・音声トラブルが起きる
・音声がよく通る人だけが話せる構図になってしまう
・初参加者の匿名性に不安がある
・無断で録音・録画される心配がある
・ツールによっては人数制限がある


オンラインの匿名性に不安は?

伊藤さんの名前のイメージ「いけふくろうの会」を居酒屋で開くときは、本名で参加する人もいればニックネームの人もいて、詳しいことを明かさなくてもOKになっています。知らない人がいても自由に話して、だんだん知り合いになっていくという形だったんですね。
ところが、オンラインでは初めての方が顔を出すのも音声もオフにして「話を聞くだけの参加」をされる場合もあります。「いけふくろうの会」は、日常的な話題としてマンガの話をするのと同列に「死にたい」「辛い」といった気持ちの吐露もある場なのですが、完全にミュートした状態の方がいる中でプライベートな悩みを話題にすることに不安を感じます。実際に会えていたときは、その人の存在からいろいろな情報とか信号を受け取って交流ができるんだけど……。
初めて参加される方については、世話人には本名やアドレスを伝えてもらう方がいいのかも、という話も出てきています。匿名でも参加OKにするのであれば、話題を変える必要性も感じています。皆さんはどのように考えているのか聞いてみたいです。

近藤さんの名前のイメージ初参加かつ「聞き専」の人のカメラをオフにしてもいいのか、というのは悩みどころですね。まったく謎めいた方がいると参加者が不安になるかもしれません。
初参加の方は聞き専かつカメラをオフにするのを控えてもらうという案もありますが、初参加の方にとっては聞き専になるメリットもあるでしょうし、迷っています。

石丸さんの名前のイメージ私はまったく考えていない発想でした。「ひきはち」でも初参加で聞き専の方がいらっしゃいますが、特に気にせずいつもどおり話をしています。
初めての人にとっては緊張があると思うし、その気持ちもすごくよくわかります。でも、初参加で完全にミュートした状態の方もいると、お話しづらいというのもあるかもしれないですね。

活動制限が続く場合、工夫したいこと

近藤さんの名前のイメージまだまだ活動制限が長引くかもしれないですよね。実際に集まれなくても、オンラインで開いていくことを目標にしたいなとぼんやり考えています。

石黒さんの名前のイメージ青少年センターを再び借りられるということになれば、人数制限をしたうえで自助会を開くことになるかもしれないし、オンラインでやっていくかもしれない。ほかの人とも話し合いながら決めていこうと思います。

たくみさんの名前のイメージこのままの状況が続くと、居酒屋での飲み会はハードルが高すぎますよね。もし感染が落ち着いて制限が緩くなったら、公園のような換気の良い場所で、距離を取りながらおしゃべりすることも考えています。

石丸さんの名前のイメージ私たちはオンラインでのメリットをいろいろと感じているので、このままオンライン女子会を続けていきたいなと思います。こういう状況だからこそストレスが溜まりやすいと思うので、人に言えないことや辛いことを言える場にしていきたいですね。

居場所への参加を考えている方へメッセージ

ひきこもり自助グループ step

近藤さんの名前のイメージまだオンラインではこれからで、うまく回せるか自信がないですが、参加してくれたら歓迎します!よかったら来てください。

石黒さんの名前のイメージ自助グループと一言でいっても活動内容や雰囲気も異なると思うので、ホームページなど見ながらいろんな会に気軽に参加してみて、自分に合うものを探してみてください。「step」への参加もお待ちしています。

▼団体サイト
https://step-kanayoko.web.app/index.html

▼Twitter
https://twitter.com/stepkanayoko


いけふくろうの会

たくみさんの名前のイメージいろんなところを試してみて、居心地が合うなと思ったところに参加してみるといいと思います。最初は緊張もあるかもしれませんが、話を聞くだけの参加がOKのところもありますよ。「いけふくろうの会」も誰でもウェルカムなところなので、ぜひ遊びに来てください。

伊藤さんの名前のイメージ「いけふくろうの会」はゆるゆるダラダラした会なのですが…そんな会でも、誰にも会わないよりいいかなとか考えている方、興味があったら大歓迎します。オフラインとの違いはありますが、交流したい気持ちはたくさんあります!
「人に会いたいな」と思ったときによかったら来てください。

▼団体サイト・ブログ
http://ikefukurou.blogspot.com/ 

▼伊藤さんのTwitter
https://twitter.com/fumika_itou 


ひきこもり女子会 ひきはち

石丸さんの名前のイメージ「なんとなく辛いな」とか「大変で疲れたな」という気持ちになることがたくさんあると思うんですが、そういうときにそっと居場所になれるような、安心して過ごせるところになればと考えています。あまり気負わずに、お話しに来てくれたら嬉しいです。待ってま~す。

▼団体サイト・ブログ
https://hikihachi.hatenablog.com/

▼Twitter
https://twitter.com/hiki_hachioji


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