神奈川県文化センターの写真

会場のひとつである神奈川県立青少年センター(横浜・紅葉ケ丘)

神奈川県立青少年センターが主催している各地域巡回型居場所「い~~ばしょ」。参加費は無料、さらに予約不要なので好きなタイミングで参加できるだけでなく、月1~2回のペースで県内のさまざまな地域で開催するという特徴があります。
居場所の運営に関わっているNPO相談・支援アドバイザーの大出さんと青少年センター青少年サポート課の奥さんに、神奈川県が運営する意義や手応えなどについてお話を伺いました。

「神奈川県」が居場所を主催する意義

NPO相談・支援アドバイザーの大出さん(左)と青少年サポート課の奥さん(右)

―「い~~ばしょ」はどのような経緯で始まったのですか?
(大出)ひきこもりの方々が安心して外に出られる場所が、なかなかないと感じたことがきっかけです。せっかく参加してみた居場所が自分に合わなかったら、居場所の数が少ない地域では他のところに参加するのも大変なことだと思います。それならば、各地域に居場所ができる方法がないかと考えたのです。
そこで、神奈川県と市町村が連携する形で各地域に居場所を設け、少しでも多くの方が参加できるようにするという方法が取られました。

(奥)県立青少年センターは相談支援をしているのですが、相談された方が「少し外に出てみようかな」と思ったとき、外に出られて安心して居られる場所が「い~~ばしょ」だと考えています。いつ来てもいいし、予約もいらないし、いつ帰ってもいいという、すごく緩い場所なんです。まずは外に出るきっかけ作りにとても良いと思います。
いま、県内全域を見てみると、誰でも予約不要で行ける居場所はまだ少ないと実感しています。それであれば、神奈川県が各市町村と協力しながら居場所を開催していこうと考えました。横浜方面ばかりに偏らないよう、いろいろな場所に広がるといいですよね。

(大出)居場所を開催することは、市町村の担当者にとって、とてもハードルが高いと思われがちです。そこで、私たちがカバンひとつで現地に行って、居場所を運営する様子を見ていただくと「居場所ってそこまでハードルは高くないんだ」と感じてもらえます。現に、いくつかの市町村が手を挙げて「自分たちでもやってみたい」と話してくださいました。

参加者はどのように過ごしているの?

テーブルゲームや折り紙などがあり、思い思いに過ごせる

―居場所では、皆さんどのように過ごしていますか?
(大出)参加者の数は開催場所によって違いますが、少ないときでも3名はいらっしゃいます。青少年センターのように駅が近いところですと10名ほど参加されることもあります。参加者数が少ないところでも、初めて参加される方が1~2名はいらっしゃいます。

初参加の方はとても緊張されているので、話さずにリラックスして過ごせるようコラージュ作りや折り紙をするスペースや何もしないスペースを設けています。ご自身の気持ちを落ち着けて、ほかの方の様子を伺いながら過ごせます。

居場所の空気が緩んでくると、隣の人が「どうやって折り紙を作るの?」というように会話が始まって、そこから「こんな居場所もあるよ」といった情報交換が始まることもあります。初めは緊張していた方も話すことができて、柔らかい気持ちで過ごせるようになります。もちろん、1人で過ごしたい方にはそのためのスペースも設けています。
また、お茶やお菓子、それにテーブルゲームなども用意しています。お茶がきっかけで席についたりすると、自然に会話が弾んでゲームが始まることもあります。

―参加されている方の年齢層を教えていただけますか。
(大出)10代から50代と幅広い方にご参加いただいていますが、皆さん違和感なくお話を楽しんでいますよ。年の差がある方たちが話していても特別ではないような感じがしていますし、皆さんが居場所を楽しい空間にしてくださっています。

(奥)参加者もスタッフも関係性がフラットですね。お互い知らない者同士だから、ちょっとした気遣いや優しさであふれていますよ。

ひきこもり経験者(かながわbeフレンド)がサポート

居場所のイメージ(※スタッフによるデモンストレーションです)

―居場所を作るときに参考にされた取り組みはありますか?
(奥)「い~~ばしょ」には、ひきこもり経験者の「かながわbeフレンド」がスタッフとして運営をサポートすることになっており、初めて参加された方でも安心して過ごせるような取り組みとなっています。いま「い~~ばしょ」には「何もしないスペース」がありますが、これはbeフレンドの発案で生まれたものです。

(大出)居場所を開催したあとには反省会をするのですが、そのたびにbeフレンドから提案があります。参加者を女性だけに限定した女子会を開催したときは、アクセサリー作りやトークテーマなども取り入れました。「い~~ばしょ」は、beフレンドやスタッフの創意工夫で成り立っていますね。

―相談事がある場合でも「い~~ばしょ」をご利用できるとのことですが、実際はどのように相談できるのでしょうか。
(大出)beフレンドに自身のひきこもっていた話をする方や個別に相談をしたいと受付で言ってくださる方もいます。 個別の相談がしたいという方には、相談員が別の場所へ案内してお話を伺っています。

居場所に来て普通に話しているうちに、今困っていることの話題が出たり、ほかの居場所の情報が出たりと、自然に相談のような話に流れることもありますね。

―ちなみに、もし自分でも居場所を作ってみたい、活動を始めたいという当事者がいたら、サポートしてもらうことはできますか?
(奥)青少年サポート課には、まさに大出さんがされている「NPO相談・支援アドバイザー」という専門家がいらっしゃいます。
「NPO相談・支援アドバイザー」の役割には「NPO法人を作りたい」「こんな活動を始めたい」という方への相談・支援も含まれています。活動を始めるにもまだ1人しかいない場合でも、仲間の増やし方や実践的な運用方法などについてアドバイスをもらうことができます。

参加者の声が、過ごしやすい「い~~ばしょ」を作る

居場所へのルートがわかりやすく示されている(※青少年センターのケース)

受付の記入用紙で、気になることをスタッフに伝えられる

―巡回型の居場所ということで開催する地域が毎回変わりますが、「同じ地域の居場所に再び行きたい」と思った場合はどうしたらよいでしょうか?
(奥)「またここで開催してください!」ってアンケートに書いてくれると嬉しいですね。

(大出)アンケートにご希望を書いてもらえると、皆さんの意見を市町村にも伝えられます。開催した方も皆さんのご意見やリクエストをとても重視しています。

―参加者の意見が反映される居場所なのですね。
(大出)いろいろな人に心地良く過ごしてもらうためには、一人ひとりのお話を聞くことが大切だと思っています。だから、皆さんにはアンケートを書いていただくようお願いしています。
アンケートを書くのは負担になるかなと思うこともあります。しかし「い~~ばしょ」が本当にいい場所になって、次に利用する方が「参加してよかった!」と思えることが重要なので、負担にならない形でご協力をお願いしています。

―最後に、この記事を読んで「い~~ばしょ」に興味をもってくれた方へメッセージをお願いします。
(大出)ぜひ居場所に参加して、皆さんと楽しい時間を過ごしてください。いろいろな情報を得るきっかけが見つかるかもしれません。


ひきこもり当事者が気軽に行ける居場所をいろいろなところに作りたい、参加する人の声を聴きながら一緒に楽しんで作り上げていきたい。大出さんと奥さんのそんな気持ちがひしひしと伝わってきました。
今後の開催予定は、下記のページからご覧になれます。お近くの地域で開催される際は、ぜひ参加を検討してみてください。

https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ch3/cnt/soudan/40_ibasyo.html 

ひき☆スタ スタッフも「い~~ばしょ」に参加してみました!

「い~~ばしょ」に参加したAさん(左)

ひき☆スタのスタッフでもある元ひきこもり当事者のAさんに、「い~~ばしょ」に参加していただき感想を話してもらいました。

(Aさん)新型コロナウイルスが流行する前から居場所そのものに通いはじめていますが、「い~~ばしょ」は初参加でした。
今回参加したのは、青少年センターで開催された「い~~ばしょ」です。今回は居場所慣れしている参加者が多いなと感じました。運営をサポートするbeフレンドさんのうち2名が知人だったので、あまりの偶然に驚きました。
beフレンドさんは運営側という立場ではあるけれど、居場所の参加者に溶け込んでいました。ちなみに、beフレンドさんはすでに13人近くもいらっしゃるとのこと。

特に印象に残ったのは、県のスタッフの方が参加者さんと話す姿がときどき見られたことです。居場所で何をしたらよいかわからない人も、声をかけてもらえると自然に参加できると思います。

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