2014年2月19日、さくらWORKS<関内>で第2回ひきこもり超会議が行われました。
「ひきこもり支援の『次』を考える」をテーマに、ひきこもり支援の現場に関わる4人のパネリストが登場。ニコニコ動画やUstreamでのウェブ中継も行い、リアルタイムで質問を募集するなど、昨年の第1回と同じく視聴者参加型のイベントとなりました。
今回は前編として、パネリストの皆さんが「『ひきこもり』という言葉にどのように関わっているか」について取り上げます。
パネリスト
園田明日香(NPO法人コス援護会)
勝山実(ひきこもり名人)
丸山康彦(相談機関ヒューマン・スタジオ)
石川良子(松山大学)
ファシリテーター
杉浦裕樹(NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ)
敬称略、その他イベント概要はこちら:http://sakuraworks.org/event_schedule/530/
コスプレから「生きづらさ」を変えていく――NPO法人コス援護会、園田明日香さん
園田:「NPO法人コス援護会」の園田と申します。コス援護会ってなんでしょうという話なんですけれども、コス援護会の「コス」というのは「コスプレ」のコスです。
ひきこもりにどう関わってるのかということなんですけれども、僕は元々ひきこもりの支援をしていたわけではありません。結果的にそうなりました。精神的に厳しい、困難な状況に追い込まれた、もしくは陥ってる人とか、最近の言葉で言うと「生きづらさ」を抱えている人もしくは生きづらい人が、人生の中でかなり自分の未来を閉ざしている――「生きづらさ」がその原因になってしまっています。そういった方々と一緒に何ができるかという部分を根底に考えて活動しています。
活動をしていた中で結果としてひきこもり等の支援もすることになったのは、活動を進めていく中で何をしていくかということを精査していったからです。どちらかと言うと自分自身含め「ピアサポート」というわけではないですけど、当事者と言われるような方、また自覚があるかないかは別として、かなりグレーの人も含めてそういった方々が周りに多かったし、参加してる方の中にも多々含まれているからなのだと思います。
支援というと、「支える・援助する」みたいな話になると思うんですけど、何かをしてやろうとか、こうするんだ、みたいなものは、正直何も持ち合わせていません。
答えを持っているのは本人だけですし、また何かをなさなきゃならないのも本人で、最終的にやるのはご本人なんですね。私たち支援職および支援する側に何ができるかといえば、問題点があれば整理し、「こうしたい」というものが具体的に出てきたら、マンパワーの範囲で道すじをつける、またそれを支援してくれる人とつなぐということです。
誰かを必ずどうにかしてやろうというわけではないので、基本的にはマンガ・アニメ・ゲーム、もうちょっというとコスプレなどみんなで集まるのが好きな人が集まっている団体です。その中で困ったことがあったな、でも相談する人が居ないしということがあったら、「じゃあこういう風にしてみたらどう?」というような活動をしています。
杉浦:今メインの拠点は川崎に置いて、活動のエリアの大体は神奈川県が中心なんですか?
園田:今現在、活動の中心になってるのは川崎の南部、川崎区と県の施設を使わせて頂いてる関係で青少年センター、および藤沢でちょっと動いてる感じですので、地域としてはかなり限定した活動になっています。
2007年から活動を始めて7年なんですけど、実際に人から支援と言われるような活動を始めたのは2009年以降なんですね。初めは極端な話、「お友達作りましょう」みたいな団体だったので、活動の中で変わってきたと思っています。
実際問題、集まって人と繋がるときは目的がないと動かないですよね。「居場所作り」として居場所に出てこれる人は、関係性が既にできていないと正直難しいです。
入り口としてイベントに参加してもらったり、スタッフをしてもらったりする中で、一緒に悩んで考えていくというようなことになりますかね。
ただ団体として何をやっているかということを外向きに説明しなければならないし、一緒にやりたいなと思っている人に声を届けなければいけないという部分で、「居場所作り」とか「若年層の自立支援」という言葉を使っています。
NPO法人コス援護会 https://www.npo-homepage.go.jp/npoportal/detail/014002143
ジャンル的には、ひきこもり――ひきこもり名人、勝山実さん
勝山:自称、ひきこもり名人の勝山実です。よろしくお願いします。自己紹介は……まあ特にないんですけど、杉浦さん僕を構ってくれますかね(笑)
杉浦:いいですよ、今見たのだけどウィキペディアに載ってるんですね。
勝山:これ僕が書いたわけじゃないんですけど、よく「自分で書いたんでしょ」と言われるんです。けど、僕は書いてないです。
杉浦:(ウィキペディアを読みつつ)「日本の、著作家」
勝山:そう、今日も確定申告で自分の職業欄に「文筆業」って書いた時に、税務署の人を騙してるなって心が痛みましたけど……。
杉浦:でも文筆はしてるんでしょ?
勝山:してますよ! 去年も6万円分くらい文筆業しましたけど。
杉浦:2001年(「ひきこもりカレンダー」を文春ネスコから出版) がそういう意味で文筆の……
勝山:元祖ですね。この時はもう、自分は作家になったと思い込んで、かなり増長しちゃって。
杉浦:「神奈川県横浜市出身、在住。親の期待に応えるため名門高校に進学するが中退し、ひきこもり生活に入る。」って書かれてますね(笑)
勝山:自分で自分の出た学校を名門高校って言ってしまうあたりが、私の弱さだと思うんですね。ここで謙虚に高校って言えたらなって思うんですけど。でもウィキペディアって誰でも書けますからね。
杉浦:それで、文筆活動を中心に伺うと「『ひきこもりカレンダー』はひきこもりの『生の声』を世間に主張した著作として複数のマスメディアに取り上げられるなど一定の注目を浴びた」と。
勝山:うん、まあそうでしょうね。広く捉えればそういうことでしょうね。これ書いた人が上手いと思いますよ。
杉浦:「その後はひきこもり問題に詳しい精神科医の斎藤環との対談や2002年10月に新宿ロフトプラスワンで開かれたひきこもりをテーマとしたトークイベントにゲスト出演」
勝山:これもほんとなんですよね、でもこれ1回だけですからね。ホントはロフトプラスワンで斎藤環さんのイベントがあって、その第2部みたいな感じで押し込んでもらったんですよ。僕自体は豆粒みたいなひきこもり当事者でしかないけれども、僕の本を出した文藝春秋ってところは大きい会社ですから。
杉浦:これねえ、すごいですよね。中央公論、文藝春秋、婦人公論。そういうところに著作を。
勝山:そうですねえ、ほんと過去の栄光。
杉浦:最近はなにしてるんですか?
勝山:最近は朝9時くらいに起きてネットカフェに行って、そこにモーニングサービスとうのがありまして。夕方6時まで1000円でいられるということで、そこでずっとネットでじっとしてますね。
家がリフォーム中で家にいられないので、昼間ネットカフェ難民みたいな感じでじっとしてるんですよね。そういう意味ではネットカフェにひきこもってる感じですかね。
杉浦:「ひきこもってないじゃん」ていうコメントが今届いてます(会場爆笑)。
勝山:ほんとうにね、言われると申し訳ない気持ち。でもひきこもりの生態として、精神科医の関口宏さんが言ってたんですけれども、大体3パターンあると。
1.全く部屋から出られないひきこもり
2.部屋から出られるけど家の中だけ、家族の中で生活をしてるひきこもり
3.家の周りを徘徊するひきこもり、図書館やコンビニなどふらふらするけど働きも学校もいかないというひきこもり
僕は3にあてはまるんであって、ジャンル的にはひきこもりであると思って活動しています。
鳴かず飛ばず働かず(勝山実ブログ) https://hikilife.com/
「相談」という支援の形――相談機関ヒューマン・スタジオ、丸山康彦さん
丸山:こんにちは。神奈川県藤沢市で、個人で相談所をやっている丸山と申します。いつものパターンでチラシを掲げながらいつも自己紹介をしております。相談所なので、ほとんどお付き合いをしているのは親御さんで、ごく一部当事者の方もいらっしゃいます。
相談の他に関連業務をやっておりまして、家族会を3ヶ月に1回やっています。始めてから4年目が終わったところです。それから「青少年支援セミナー」というのを10年前からやっていて、来月第20回を開催し(2014年3/2、9終了)、この20回目で終わりにするということになっています。
去年の6月に周りの関係者の方と一緒に設立した「湘南ユースファクトリー」という新しいひきこもり支援団体の代表者にさせられましたので、そっちの方に活動のウェイトを段々移していかなきゃいけないというのがひとつの理由です。
もう1つの理由は相談というのは個人として親御さんとか本人と1対1でお付き合いするわけですので、支援システムではありません。だから湘南ユースファクトリーで支援システムを、それも一般的な支援システムではない、違った立場から作っていきたいということですね。
青少年支援セミナーは啓発業務なので、そういった部分はもう1つのメールマガジンを残して続けて、イベントという形の啓発はどこの団体でもやってるので終わりにしようということで最後になります。
以前の「青少年支援セミナー」では支援を中心にプログラムを作っていたのですが、前々回からは当事者側の視点からプログラムを作っています。勝山さんや僕の仲間と言える当事者・元当事者に出てもらって話をしてもらうという内容を中心にやってきました。
最後に僕自身のことを話しますと、高校入学後半年くらいから不登校状態になりまして、それから足掛け3年半行ったり行かなかったりという状態を続けまして、当然出席日数不足で1年生を5回やって、最後の3年間は充実した学校生活を送り、入った学校を7年かけて卒業ということ。
それから大学卒業1年後からひきこもり状態、社会にまた出るまでの期間がこれまた7年、ただ最後の1年は元気になって社会へ出る準備をしていたので正味6年半もいかないくらいなんですけれども。
そういうことで自分自身が元々当事者だったこともあるが、当事者だからこの世界に入ったというよりも、僕がひきこもっていたときの結論としてですね、不登校とかひきこもりは本人をどうにかしようとみんな思ってますが、僕はそうは思えず周りをどうにかしたいと思ったんですね。
それで不登校とかひきこもりの支援の世界といってもですね、本人を支援するフリースペース・就労支援のスタッフということではなく、本人ではなく親御さんや周りの人が利用するであろう相談という仕事、職種を選んだ、こういう経緯でヒューマン・スタジオを設立しました。
相談機関ヒューマン・スタジオ https://husta.is-mine.net/
ヒュースタ日誌 http://blog.goo.ne.jp/husta
シンパシーを感じて関わり続ける――松山大学、石川良子さん
石川:改めまして石川良子と申します、よろしくお願いします。社会学を専攻しておりまして、というひと言から自己紹介を始めるのはもしかしたら初めてかもしれません。
自分が調査とか研究という名目で関わっているということに対して、どうやって折り合いをつければいいのか。私自身がひきこもっていたというわけでもなく、身内にそういう人がいるわけでもなく……でも私自身シンパシーを感じるというところから最初は始まりました。
振り返ってみれば、ひきこもりの集まりに顔を出すようになったのは13年目で、長い年月が流れていることに対して愕然としてみたり、という感じです。
何をやってきたかというと、当事者と呼ばれる人、自身をひきこもりだと思う人、家族や支援者ではなく、生きづらさや様々な困難と向き合うために集まりに参加する人に話を伺いながら、医者が治療援助の対象として切り取ったのではないような、本人の声からひきこもりとはなにか、そこから回復する、抜け出すなど表現は難しいが、それはどういうことなのかについて研究してきました。私のようなひきこもっていない人間が話を聞くわけですから、そういう人の話を私自身がどう受け止められるのか、ということをずっと考えやってきました。
ただ調査という形で関わっていたのは、思い返すと結構前のことで、じゃあ今はなにをしているかというと、名前は伏せますがある集まりの「共同世話人」という形で関わらせてもらってまして……
勝山:名前出してよ~。
石川:それはね無理なのよ~。
勝山:わかりました、諸事情諸事情。
石川:諸事情諸事情、大人の事情。違います、何故かというと私はものを書くということをやっているので、活字になったものが一体誰なのかと特定できるような形にしてしまうのは一番やってはいけないこと、その協力してくださった方を踏みつけにすることにつながりかねないので、そういう意味で名前は勘弁をという風に申し上げたのです。
今はその集まりにいて何をやっているかというと、そこにいるだけです。
いろいろな波はありながらも、こういったことを13年やりつつ、10年近く共同世話人という形でやってきて思いますが、長く続ける事自体が大事なんだなと。私のような、現場の方からするとわけわからない人間がいるだけで、「よかった」と思ってくれる人がいるんだなと、最近すごく感じられるようになってきました。
調査研究という枠組みは外れないのですけれども、それよりも何故関わり続けているのかと言うと、言葉は悪いですが「腐れ縁」という言い方をしています。
色んな方にお話を聞いていると、そう簡単に「はい、やめます」とは言えないというのがひとつ。
あともうひとつは私自身が愛媛に行って、まだそこで腹を割って話せる相手がいないんですよね。10年以上付き合い続けているホームというか、安心して胸襟を開いてお話ができる人達がいる場所がその集まりなのです。
このような言い方は叩かれるのも承知してるのですが、そういったつながりの中で支えられてると実感しながら、最近は何をしている人かと聞かれたら、「ただそこにいる人」という感じで関わっています。
杉浦:1番最初にこの分野に関心を持ったのはどうしてなんですか?
石川:1番最初はシンパシーでした。13年前は大学に行っていたのですが、就職活動ができなかったのです。大学に友達がいなかったので、就職セミナーに行くということがわからなかったとか、自分自身がどういう仕事に就いて何したいのかというビジョンが全く持てなかったとか。
OLは無理だろうと思っていて、満員電車で毎日通勤とかあり得ないなとか、自分がこの先どう生きたらいいんだろうということを考えていたところへ、どんぴしゃで「ひきこもりブーム」が世の中に起こりました。そこで大学院に入って、本格的に研究するようになりました。
ただそれだけでは続けらない、私は実際ひきこもってないですから、そこのところの違いを認識させられつつです。
昔はみなさん怖かったんですよ、今でこそ当事者の方が色んな人とオープンに話してくれるようになりました。ひきこもっていたご本人自身の苦しさの一番中核にあるのが、自分が何者なのかわからないというところです。皆さんが苦しむ中に、「私もシンパシーがあります」と簡単に言うのはなかなか難しいもので、実際にシンパシーを感じながらも、どうやって距離感をはかっていくかということをずっとやってましたね。
松山大学HP内紹介 https://syl.matsuyama-u.ac.jp/mtuhp/KgApp?kyoinId=ymddyggiggy
後編に続きます。
イベントの様子は動画でも視聴できます。
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