ひきこもりはなぜ「治る」のか?―精神分析的アプローチ (シリーズCura)
斎藤環
中央法規出版
214ページ
2007年10月発行
精神医療の立場から
精神医療の立場からひきこもり当事者や親への支援を行なっている著者が、その支援の方法について書いた本。抽象的な内容が多く、問題解決のためのマニュアルが示されているようなものではないみたい。ひきこもり現場への対応が、きちんとした理論的な裏付けがあってなされていることを紹介しているよ。
高名な精神分析学者らの研究を引用していて、これがちょっと難しい。でも、ひきこもり治療への対応にどういった根拠があるのかキチンと知るためには、とても良い入門書になるんじゃないかな?
理論を踏まえた上でのひきこもり支援
本の後半では、そうした研究理論を踏まえた上でひきこもり支援の方法を展開している。治療(といっても本書では投薬治療ではなく、カウンセリングや相談によるもの)の目標は「元気」にする、ということで、特にひきこもり当事者と親の関係性を重視。ひきこもり当事者がどういった心理状態にあるか……例えば生存や実存への不安などを考慮し、親と子の両者間で行うべきこと、または留意すべきやり取りについて説明されているよ。
注目したいのは、ひきこもり当事者から見て親は「他者」ではない、というところ。そして親からの承認だけでなく、第3者からの承認を得たときにこそ、自尊心が満たされるという部分だ。これはひきこもり当事者でなくても、理解できるメンタリティだと思う。他者からの承認で、自分の価値を自分で認められることってあるよね。
「他者」と「自分」、それから「自分」に最も近い「親」との関係性から、ひきこもりに関わる人々がどういったことを前提にコミュニケーションを取るべきかについて、この本は書かれているんだ。
例え、抽象的であったとしても
著者はこの本の内容が抽象的であることを認めた上で、
「ひきこもりへの単純な理解が、多少の混乱を含んだ複雑なものに変わること。そこから多くの有益なアイデアが生まれてくることを願ってやまない」
と、あとがきで書いている。今は難しくとも色々な知識を頭に入れておくことで、あとで必要になる引き出しが増えるのかもしれない。
著者は治るということは「自由」になることだ、とも言っている。それは閉塞した気持ちから開放されるという意味で、これこそ本書における治療の目標、「元気」になること。心の中をスッキリさせるためのヒントが、この本にはあるのかもしれないな。ふーむ。
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