こどもニート、大人ニート―タイプ別脱出プログラム表紙こどもニート、大人ニート―タイプ別脱出プログラム
神山新平
草思社
255ページ
2008年10月発行

著者について

 著者は平成12年に「ニュースステーション」のひきこもり特集を制作したテレビマン。それ以来、2500人以上のひきこもり、ニートを取材し、本業のかたわら社会復帰を手伝ってきた……と、表紙の裏にある本書紹介に記されている。

こどもニート、大人ニート

 本のタイトル「こどもニート、大人ニート」っていうのは、何だか聞き慣れない言葉だよね。これは、著者がニートをタイプ分けして名付けたもので、この2つからさらに枝分かれするみたい。どうしてそんなタイプ別に分けるのかというと、そうすることでそれぞれに適した解決策が見つかるから、ということなんだって。ふむ。

 本書では、まず「ひきこもり」と「ニート」を区別するよう警鐘を鳴らしている。これらを混同すると、間違った対策を施してしまうからとのこと。ちなみに、前回紹介した斎藤環「ひきこもりはなぜ『治る』のか?」では、「ニート」は経済学的用語で「ひきこもり」は状態像を示す言葉「ニート」という大きな円があるとしたら、「ひきこもり」はそこに包括されるやや小さな円、と解説されていたんだ。

本来のひきこもり

 一方の本書では、「本来のひきこもり」とは、不登校という前兆現象をへて生まれる、生徒、学生だけが陥る特定の停滞であり、「ニート」は就職に失敗した、または就労が困難になったことにより停滞している状態である、と明確に線引きしている。

 これは恐らく両者の支援する立場や方法の違いからくるものだと思う。著者はニートに対して社会復帰、社会参加を最終到達点としているようなところがある。だからといって、誰でも就労支援させればよいという考えでは無いようで、そのためのニートとひきこもりの線引き、ひいてはニートのタイプ別区分けへと至ったみたいなんだ。

ひきこもり事例の豊富さが魅力

 この本の魅力は多様な事例から、どのように問題解決に至ったかが豊富に書かれている点で、ドキュメンタリー本として読むこともできるね。筆者は、本書における「ニート」に対しては強く社会復帰・参加を促していて、それもタイプごとに方法は変わってくる、ということなのだけど……中には著者の強力なコネを使って仕事を世話したり、職業体験をさせたりするものも結構あって、ちょっと特殊すぎる手法を使っている感は否めない。

 まあしかし、それも著者の粘り強い交渉やコミュニケーションによって信頼関係を築いた証でもあり、先ほど対照的な例として紹介した斉藤環著「ひきこもりはなぜ『治る』のか?」で示されていた「第3者」による支援の効果を裏付ける可能性も秘めているようにもとらえられるね。

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