元ひきこもりニートがリアルに教える! 脱ニート完全マニュアル
地雷屋(元ニート)
2012年
メタモル出版
208ページ
具体例を使った「当事者向け就活マニュアル」
これまで元当事者による書評は「『ひきこもり』だった僕から」と「安心ひきこもりライフ」があったね。今回の「脱ニート完全マニュアル」も元当事者が書いたもの。タイトルには「ニート」とあるけども、立ち直ろうとしながら何度も挫折し自問自答する著者の姿は、ひきこもり状態にあったと言えるのかもしれない。
この本が先に挙げた2冊と違う点は、ひきこもり当事者はどのように就職活動をしていけばいいか、自らの経験をもとに社会進出/復帰への手順を示していることだね。
本書は大きく3つの章立てになっていて、その中でもほとんどのページを割いているのが第1章「脱ニート考察」と第2章「ニート的就職活動」。第1章ではひきこもり状態にある自分の心構えを努力して変えていくこと、そして第2章では具体例を示しながら就職活動のコツを書いているね。当事者の悩みの種である「空白期間」や「社会経験の少なさ」をどうカバーするか……これは知っておきたい! それでは、まずこの2つの章でどんなことが書かれているか紹介していくね。
失敗を失敗と思わず、自分を肯定する
著者は専門学校卒業後、計6年間ひきこもりだったみたい。そこでもだえ苦しむうちに「社会」と「ニート」のお互いに誤解が多く、両者がすれ違っていることを感じたようだね。「社会」は「ニート」を危機感がなく、将来を考えていない、就職さえさせれば解決できる、と思い込み、「ニート」は「社会」を厳しいところ、社会人はあまりに立派と思い込む……。そうした誤解を解いていくのが本書の目的で、「就職すればOK」ではないとのこと。就職は「幸せになるための手段の一つにすぎない」というのが著者の考えだね。
第1章「脱ニート考察」は「精神的に脱ニートしよう!」という観点で、まずは考え方を変えていこうと提案している。ひきこもっていると考え方が閉塞してしまい、無力感や「自分が幸せを願ってはいけない」という諦め、自信が持てず自分を肯定できない……これは著者自身が体験したことでもあるのだけど、こうした考え方をしていてはいつまでも脱ニートできない、と書いているよ。そこで、精神的に脱ニートするために役立ったという23の考え方を紹介している。
ほんの一部を紹介すると、自信を持つために「失敗を成功と思う」という考え方がある。就職活動では多くの失敗を経験するかもしれないけれど、その度に立ち止まらないようにして神経をすり減らさないようにすることが目的なのかな。何かを成し遂げた後に「あれは成功だった」と言うことは誰でもできるけど、大事なのは「やる前から成功イメージを持つこと」だと筆者は書いているよ。
やる前に「失敗したら、こう思おう」と決めておく。これが重要だと思います。……「何があっても大丈夫。失敗に対しても手を打てる、プラスに持っていける」と思うこと。「自信にあふれている状態」とは、そういうことだと思います。
この他にもいろいろな提案があるけど、そのどれにも共通しているのは、心を塞いでいる殻を破って解放してあげ、気持ちに余裕を持たせるということかなー。変に気張ったり野心的になったりする必要はないんだね。ふむふむ。
アピールできる強みが必ずある
後半の第2章「ニート的就職活動」では、著者の経験や考察をもとに「空白期間のある当事者がどうやって就職活動をすればいいか」をとても具体的に紹介しているよ。まずはアルバイトから……という人のために、アルバイトでの面接の受け方から始まって、正社員として就職活動するときに考えておくこと、著者自身の1日の流れ(これがゲームやったりインターネットしたりと結構ダラダラしている……笑)、そして実物をもとに求人票のどこを見ればよいか、面接書類は何を用意してどのように経歴や自己PRを書いたらよいか……さらに、面接で実際に聞かれた質問なんてのも書かれているよ。就職活動って具体的にどんなものか不安がある人には、とても心強いね!
当事者として心配なのは、自分の何をPRしたらいいのか、自分のアピールポイントは何だろうか、ということ。もしかしたらそんなものないんじゃないか? とネガティブになってしまいそうだけど、筆者はそれを知るためにハローワークで行っている専門相談を利用するのがいいと提案しているね。筆者は「行くだけ無駄」という思いもありながら参加したそうだけど、そこで行われたグループワークで自分のアピール部分を見つけたんだって。そのグループワークというのは、みんな否定言葉を禁止して、相手の経歴からいいと思うところを探すというもの。「お前、なぜそれをPRしないんだよ!」と思うことが、たくさん出てきたんだって。ふーむ! この体験から「どんな人にも必ずいいところがある」と思ったそうだよ。各地にあるハローワークやジョブカフェなどでも同様のセミナーが行われているかもしれないので、気になった人は調べてみるのもいいね!
自分のアピールポイントも洗い出したし、いざ就職活動の実践へ! ……と気持ちは前向きになっても、やはり怖いのは「面接」だよね。こちらが自己PRなどしっかり準備をして行っても、空白期間のある求職者が相手だと、面接官は「すぐ辞めるんじゃないか」と不安になる。だから「長く働けますか?」と聞かれて心の中では「もしイヤな会社だったら1ヶ月で辞めたい」と思っていても、そこでポジティブな思考を持って「できるだけ長く働きたい」とハッキリ言うべきなんだって。まずは「働きたい」という意思をしっかり伝えるつもりで面接に臨むんだね。初めにも書いたけど、こうした空白期間について聞かれた際、実際に筆者が答えたQ&Aも掲載されているので、参考にしてみよう。
でも、こういった対応はすぐに身につくものではないよね。筆者の経験では空白期間について質問をしない会社も「3割くらいはあった」ということだけど、いざ聞かれると焦ってしまい自分のペースをつかめないかもしれない……。そこで筆者が提案しているのが「知っていますPR」というもの。「自己PR」で自分の長所を知った後は、「相手のことを知る」ことも大事なんだって。つまり、面接先の仕事内容や業界について事前に調べるということだね。経験がなくても、ネットで検索するだけでもいい、と書いているよ。
「どんな風に仕事をするか、知っていますか?」
この質問にしっかり答えられるようなら、合格率は高くなると思います。なぜなら志望動機も自己PRも、すべてそれに合わせられるからです。
●こういうスキルが必要ですよね→自分にはこういうスキルがあります
●こういうところがキモだと思います→自分にはそういう経験があります
というように、会話に取り入れるのがベストなんだって! なるほど~。もし事前に分からなければ、面接の機会に逆に質問して会話にしていくのもいいみたいだよ。
「幸せになりたい!」と思うことが大事
ここまで本書で書かれている「テクニック」について紹介してきたけど、ひきこもっている時の思考回路を変えるのは、なかなか難しい。そこは実践しながら身に付けることになるのだろうけど、モチベーションを保つためには「希望職種/志望動機をはっきりさせること」が大事だね。自分の強みを生かせる、長続きできそう、そして何より「仕事に就きたい」という希望の先にある「幸せになりたい」という願いを強く持つこと。そのための道は正社員一択ではないし、実は著者自身も就職後に自営業へ転職しているみたい。自分の幸せは何かを感じ取るために、ちょっと力を入れて模索してみるのもいいかもしれないね。
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